+帰ってきた猫+




少し切なめですが最後はハッピーエンドなのでご安心を
設定としてはアル・アジフルートのハッピーエンドの続編になります。
九アル要素もあります。軽度な性描写がありますのでご注意ください。


”猫再び”

「ピンポーン!ピンポーン!」
休日の朝の9時頃大十字九郎探偵事務所のインターホンが鳴った。
こういう休日の朝の来客は依頼者の可能性もあるので俺は迎えに出た。
「はいー。大十字九郎探偵事務所です。・・・・?!!」
ガチャっとドアを開けるとそこには見覚えのある少女がいた。
「えへへへw九郎。また来ちゃったw」
「・・・・」
目を擦った。ほっぺをツネッた。痛い。
「おーい九郎〜帰ってきてよ〜」
「・・・エンネア!!!」
しばらくして夢じゃないとわかると俺は叫んだ
「なんだ休みの朝だと言うのに騒々しい・・・。」
「おい!アル!エンネアだ!エンネアが帰ってきたぞ!」
「なんだと・・・!?!」
アルも現実だと思えない事が起こっていると気づくと飛んできた。
「アルちゃん〜元気にしてた〜♪」
「汝・・・生きていたのか?!」
俺は目の当たりしたエンネアが残酷な宿命によって死ぬところを。
当然アルも同様だから現実を飲み込めずにいる。
「うーん。まあ、生き返ったと言っていいのか少し悩むけど、エンネアは今ここに生きてます。」
「・・・エンネア・・・また会えた。本当に良かった・・・!」
「九郎・・・嬉しいけど少し痛いよw」
もう一人の家族に再会できた俺はエンネアの手を震えながらもがっしりと握っている。
「とりあえず、中に入れよ。」
「うん。」
「・・・・」
事務所に入った後、アルは少しつまらなそうに質問を投げかける。
「で?ここになんの用なのだ?妾は九郎と夫婦同然の生活を送っている。そこに割り込む気はないだろうな?」
「アル、そんなに邪険に扱うなよ。せっかくエンネアが帰ってきたのによ。」
「いいんだよ、九郎。アルちゃんの恋人は九郎なんだし。逆もまたそうでしょう?」
「まあ、それはそうだな。」
いくらエンネアが大切な家族であってもそれは変わらない。
そう答えるとエンネア改まり深く頭を下げて頼み込んだ。
「お願いします。二人の間に割って入ったりはしません。だから、お手伝いさんだとおもってこのエンネアをここに住まわせてください。」
「・・・・・」
「・・・・・」
俺とアルは予想外のエンネアのリアクションに言葉を失う。
「そこまで言うなら俺はかまわないけど。やっぱりアル次第かな・・・。」
夫婦同然に暮らしているのだから俺が良くてもアルが許さないならダメだろう。
アルも少し経ってから口を開いた。
「聞きたいことがある。それに嘘偽りなく答えよ。その答え次第では認めてやる。」
「うん。」
「まず、この世界にはブラックロッジは存在しない。マスターテリオンの母体となった汝がこの世界に再び混沌を持たらすことはないのだな?」
「それは大丈夫だよ。全ての因果は二人が断ち切ってくれた。ここにいるのはアンチクロスの「ネロ」じゃなくて一人の少女「エンネア」だよ。」
「詭弁だ。汝が再び世界最強の魔術師「ネロ」にならないと言う証拠がない。」
「アルそこまで言うことはねーだろ。」
「九郎は黙っておれ。」
アルのエンネアの辛い過去をえぐる尋問に俺は少し怒りを感じた。
「九郎ありがとう。でも、アルちゃんはずっと悪と闘ってこの平和な世界を掴みとったんだから。そう思うのも仕方ないよ。」
「で、それを証明するものはないのだな?ならば認めるわけにはいかんな。元いた世界に帰るがいい。」
「おい・・」
俺はアルを叱りかけた。その時。
「あるよ。」
「何・・・?!」
そこに本があった。魔導書というものだ。それは魔術師の生命線である。これを失えば魔術師としての力をほとんど使えなくなるのはもちろん鬼械神(デウス・マキナ)も召喚できなくなる。
「この世界にデモンベインがないように。デウス・マキナも必要ない。だからアルちゃんこれを受け取って。」
「・・・・。」
アルは無言で受け取り次の言葉を発した。
「すまない。汝の覚悟を甘く見ていた。ここにいるといい。ただし、妾と九郎の間に割って入るなら叩きだすぞ。」
「その時はいつでもどうぞ。って九郎?!」
「・・・・・」
状況が状況だけにずっと言葉を失っていた俺。それを見透かしたようにエンネアが大切なこと聞いてきた。
「ねー九郎。帰ってきた家族には言う言葉があるでしょう?」
「ああ・・・そうだな。おかえり。エンネア。」
「ふん。」
「ただいま。またよろしくね。」
こうしてまた3人の共同生活が始まった。


”猫と古本”


「〜♪〜♪」
早速エンネアは事務所の掃除を始めた。
過去の世界ように手つきは相変わらず鮮やかでみるみるうちに事務所は輝きを取り戻す。
俺とアルは隅で掃除を邪魔しないようにしている。が、アルはやはりあの時のように面白くなさそうな表情をしている。
「ふん。あの小娘が帰ってきたのがそんなに嬉しいか。」
「嬉しくないわけないだろ。それにエンネアの家事スキルはプロ級だし。大助かりだぜ。」
率直な答えを言ったのだがアルの表情はさらに強張った。
「どうせ。妾は家事ができんよ。悪かったな。」
「・・・心配するなって俺が女として愛しているのはお前だけだから。」
「そ、そうか。ならいいんだが。」
俺の言葉に自身を持ったのか恥ずかしいのかでアルは後ろを向いた。かわいいやつだ。
「九郎。掃除終わったよ。そろそろお昼作ろうと思うんだけど?」
「ああ、エンネアありがとう。今日はまだ買い物に行ってないから。一緒に行かないか?もちろんアルも。」
「わかりました。じゃあ良い材料を探すのをアルちゃんも一緒に見てね。」
「む・・・。わかった。ちゃんと監視もせねばいかんしな。」
そうして買い物に3人で出かけた。


街に出るといつものように俺とアルは手をつないだ。
だが、エンネアは手を差し出してもつなぐどころか俺の後ろに回った。
「おい、エンネア。お前も一緒に手を繋いで歩こうぜ。」
「それはいいよ。エンネアは後ろでみてるだけで。アルちゃんが嫉妬したら追い出されちゃうし。」
「よくわかっているではないか。そういう心がけでいれば良いのだ。汝は。」
なるほどそういうことか。アルを怒らせては厄介だし俺もその後何も言わなかった。


「アルちゃん。こうして奥のが賞味期限が後だから奥から取るんだよ。」
「なるほど確かに。」
「卵はパックだから触れないけど見た感じがツルツルしたのよりザラザラしたした感じの方が新鮮なんだよ。」
「そ、そうなのか。」
実際に買い物になるとエンネアのテリトリーだ。
当然アルはエンネアの言うことに頷くしかない。
なんとも微笑ましいやりとりに俺も自然と頬が緩む。
「九郎。特売だから卵3パック買っていい?」
「3パックもか?悪くなる前にそんなに使いきれるのか?」
「ちょっと考えがあるから。」
「そうか。ならいいよ。」
そう言って昼食・夕食の材料と共に3パックの卵を購入した。

事務所に返ってさっそく昼飯
「うん!うまいよ!」
「えへへ〜♪」
「ふん・・・モグモグ」
昼食はプレーンオムレツだった。油と卵以外何も使わないだけにその作り手の腕がそのまま出る。
エンネアの作ったものは油っぽくもないが焦げてもいないという絶妙な焼き加減だった。
アルは仏頂面しながらも食欲に勝てず黙りながら食べている。
「また、こうやって三人で食べられるんだなあ。俺は嬉しいよ。アルは違うのか?」
「まあ、汝の料理とは全然出来が違うからな。そこは感謝せねばなるまい。」
「あ、言いやがったな。お前は全然料理できない癖に。」
「妾は世界最強の魔導書だぞ。料理など・・・・など・・・・」
「あ、いや悪かった。」
やはりアルは自分に家事スキルがないのがコンプレックスになっているようだ。
それを見透かしたように見守っていたエンネアが声をかけてきた。
「アルちゃん。料理やってみる?エンネアが教えてあげるから。」
「?!妾は汝に教わるぐらいなら・・・」
「うん。教わってくれ。」
「九郎ぉぉ・・・汝〜!」
「流石にまたボヤ騒ぎを起こされるのは勘弁して欲しいからな。」
「うう〜」
アルは以前料理をすると言ったのはいいものの危うく火事を起こしかけた事がある、それ以来料理は全て俺がやっている。
「とりあえず、一番基本的な卵焼き作ってみない?卵料理は栄養もあるし、これができるとぜんぜん違うよ?」
「そ、そうなのか。じゃあ頼む。」
「ああ、エンネアはこれをするために卵を多めに買ったのか。確かにアルが卵料理ができるようになればだいぶ楽になるな。」
「そうそう。そういうことです。じゃあ、夕方4時前ぐらいから作り始めよう。」
こうしてアルの玉子焼きの特訓が決まった。

俺はミスカトニック大学の課題を片付けていた。
するとどこからともなく焦げ臭い臭いが
「ええい!だから料理など・・・!」
「アルちゃん、落ち着いて。確かに食べてもらう人の喜ぶ顔を考えて作るとやる気は出るけど、調理から集中を切らしちゃだめ。」
どうやら何度か玉子焼きを作ったようがことごとく失敗しているらしい。
「いい?もう一回順番通り聞いてね。卵焼きは卵をときすぎてもダメなの。」
「こ、これぐらいか?」
「ん、それぐらい」
「で、フライパンをアルちゃんは熱しすぎ。はしで卵を少し落としてすぐ焼けるよりしばらくしてから焼けるぐらいがいいの。」
「う、うむ。これなら良いのか?」
「そうそう。そして良い温度になったら溶いた卵を半分入れて半熟になるぐらいになったら手早くフライ返しで」
(以下玉子焼き講座が続くので省略)
―1時間後
「九郎!九郎〜!玉子焼きができたぞ!食べてくれ!」
「おおう。少し焦げてるけどうまそうじゃないか。」
「九郎。アルちゃんがんばったんだよ。感想を聞かせてあげて。」
ということで少し早いけどアルの作った玉子焼きとエンネアの作ったスープとサラダの夕食にすることにした。
「へえ・・・。」
もちろん最初に食べたのはアルの玉子焼きだ。アルがずっと見ている。
「うん。うまいよ。これ。」
「ふふん♪妾はの辞書に不可能の文字はない。」
料理なんぞと言ってた奴が半日も過ぎてないのに料理自慢するから調子に乗らないように少し釘を刺すことにした。
「だけど、昼のエンネアのプレームオムレツに比べて、味付けが少し薄いな。後少し焦げているのが気にならなくもない。でも本当によくやってくれた。」
「ぬぬぬ・・・そうか。九郎にいつかあの小娘に優るとも劣らないと言わせてみせるぞ。いいな、小娘、妾に協力しろ!」
「わかってますよ〜。これからいろいろ教えてあげる。」
「そうか。楽しみにしてるぞ。」
目標としている相手に協力を求めるのは少しおかしい気がしたが、エンネアがそれでいいようなので特にツッコまないでおいた。

あれからいろいろエンネアとアルと3人で話をした。あっという間に時間は経ち日付が変わる30分前
「さあ、今日はそろそろ寝ようか。」
「ダンセイニ。」
「てけ・りり。」
アルの掛け声でダンセイニがベッドモードになる。
「て、エンネア。お前は一緒に寝ないのか?」
ソファーの方に行くエンネアに声をかけるが・・・
「うん。エンネアは前みたいにソファーでいいから。」
「殊勝な心がけだな。ちゃんと約束を守るようで安心したぞ。」
アルが少し棘のある言い方をした。
「アル。料理教わっておいてそりゃねーだろ。」
「ふん。それとこれとは話は別だ。」
「九郎。嬉しいけど本当にいいから。」
「そ、そうか・・・ならいいんだけど。」
少し寂しそうな気がしたがエンネアがそう言うんだからしょうがない。
俺はアルと眠りにつくことにした。


”猫の心遣い”


その日以来。アルはエンネアに教わりながら料理を次々と会得していった。
エンネアの教え方はとてもうまく、アルのがんばりもあってアルの家事スキルはどんどん上がっていった。
卵料理、スープ、野菜料理、肉料理、魚料理、パンの焼き方等を次々と会得していった。
もちろんまだまだ応用的な料理はエンネアなしではできないものの、俺のできる範疇をあっという間に抜き去った。
エンネアとのアルの仲も良くなり。アルはすっかりエンネアを警戒することもなくなった。

「エンネア・・・今日はそのあれだから・・・。」
「わかってますよ。今日はライカお姉さんの教会に泊まらせてもらいます。」
「エンネア。すまん。」
「いいの、いいの。エンネアはあくまでお手伝いさんで居候なんですから。」
「・・・・気をつけてな。」
そう言ってエンネアはライカさんの教会へ向かった。
俺とアルは当然夫婦の営みをしたい時がある。だがエンネアのいるのにそれをするのは流石に無理だ。
そういう日はライカさんの教会に行ってもらうのだが、エンネアは笑顔で快く了承してれるだけに逆に少し良心が痛む。
だが、時が経つのも早い。

「エンネア、ハワイに旅行に行こうと思うんだが一緒に行かないか?」
「いいよ。エンネアは留守番してるから夫婦二人で楽しんできてください。」
「またか、前もその前もそう断ったじゃないか。今回ぐらい。」
「ふーん?そう?じゃあホテルで同室になるけど一緒に寝ていいの?キャーw」
「それは妾が断じて許さん!!」
「だよなあ・・・。」
当然そうなってしまうわけで、かと言って二部屋借りるような予算はない。
「悪い。じゃあ留守番頼むわ・・・。」
「はい。わかりました。お任せください。」
「・・・・。」
アルも少しエンネアに悪そうな顔をしている。

―旅行先のホテルのベッドで事後1時間後
「なあ、アル。エンネアのことだけどさ・・・。」
「やはり、九郎も気になるか・・・。彼奴は恐らく妾が九郎の妻として恥じないようにいろいろ尽くしてくれてるんだろうな。」
「だよなあ・・・。あれだけ世界が絶望を繰り返してもなお自分の幸せより、俺達の幸せを想ってくれている。」
「確かに哀れではあるな。かと言って、妾は彼奴に九郎を譲る気はさらさらないぞ。」
「俺も一番に愛しているのはお前だけだよ。エンネアは家族だけどな。でも何か恩を返したい。」
「それは妾も同じだ・・・。」
そうしてあっという間に旅行も終わった。


”猫へのプレゼント”


時が経つのは早い(二度目)
あれから俺はミスカトニック大学を卒業し覇道財閥に正式に雇われた。
アルはエンネアに家事全般を教わり、掃除全般や洗濯、アイロンがけのような衣類の家事もこなすようになった。
衣・食・住の家事全てできるようになったのだ。同時に俺達はエリートだけが借りれる、覇道の社宅にも入り充実した日々を送っていた。
アルもすっかりエンネアを家族として受け入れており、俺もそれは嬉しい限りだった。
エンネアは成長し大人になったものの相変わらず買い物に行っても手を繋がず、一緒に寝ることもない。
夫婦の営みをする時はライカさんの教会に孤児たちの面倒を見に行っているし、旅行も一緒に行こうとしない。
それでも絶えず笑顔で俺達のために尽くしてくれている。
だから、俺とアルはあることを決めた。

今日は9月9日エンネアの18歳誕生日だ。
エンネアとアルの作った豪華な料理が並ぶ。
俺が仕事から帰ると誕生日パーティがはじまった。
しばらく雑談と食事を取った後俺は本題を切り出した。
「なあ、エンネア。いつも俺達のためにありがとう。でも今日はお前の誕生日だ。日頃のお礼も兼ねて、俺達から何かプレゼントさせてくれ。」
「いいですよ。一緒に住まわせてくれているだけでエンネアは十分幸せだから。」
「だが、こうも妾達だけ世話になりっぱなしでは妾達の気がすまんよ。だから今日ぐらいわがままを言ったらどうだ?」
「そうそう。俺達に出来る範囲でだけどな。な、何か恩返しさせてくれよ。」
エンネアは少しの間沈黙した後小声で言った。
「・・・・・・めて・・を・・・」
?何を言ったんだ?
「やっぱりだめだよ。こんなの・・・。アルちゃんが絶対怒るから。」
エンネアは俯いてしまう。
「いや、妾もちゃんと言ってくれないと反応のしようがない。」
「そうだぜ、今更恥ずかしがる間柄じゃないだろう?」
「そう・・・?じゃあ・・・言うよ・・。」
「うん。」
「こい。」
「九郎。エンネア・・・の・・!!初めて・・・を・・!!貰ってください・・・!!」

―ピシッ。世界が凍った。
「「「・・・・・」」」
三人ともしばらく沈黙した。とりあえず、沈黙を破ることにする。
「ああ・・えっと。それってつまり・・?」
「うん。九郎の元に来てからずっと見守る気でいた。見てるだけで良いと思っていた。でも、九郎の暖かさには勝てなかった。やっぱりエンネアは九郎に初めてを捧げたいの・・・!」
エンネアはここに来てから初めて涙を流した。
「ずっとずっと叶わなかった夢だから・・・でもダメだよね・・・最初に約束したことを破ることになるし・・。」
俺はアルを見た。そしてアルも沈黙を破った。
「・・・妾も悠久を渡り歩き・・・九郎に初めてを捧げた。だけど汝は無限に繰り返される世界で一度もそれは叶わなかったのだな・・・?」
「そう・・そう・・・だから・・・!」
エンネアの目から涙が次から次へと溢れてくる。
ずっとずっと叶わなかったエンネアの願い。大好きな人に処女(初めてを捧げる)という当たり前のこと。それを思うと俺はこう言わざるおえなかった。
「・・・・アル。一度だけ、許してやってくれるか・・?」
「・・・・仕方あるまい。汝には今まで言葉では表せられないほど世話になったのだ。一度だけならな。」
「九郎・・・。アルちゃん・・・。」
アルの了承のもと俺は一度だけエンネアを抱くことにした。

「エンネア。一つ言っておく。俺の一番はアルだ。それにこれが終わったら俺はもう二度とお前を抱けない。だから辞めるなら今のうちだぞ・・・。」
「大丈夫だよ。初めてを捧げるのはずっとずっと九郎しかいないと思ってから。だからお願い。最初で最後の初めてをもらってください・・・。」
「わかった・・・!」
「ん・・・!」
その言葉を聞くと俺はエンネアに口付けし抱いた。熱い熱い夜だった。

「エンネア・・・これで良かったのか?」
「うん。これからも、ううん、これからは今まで以上にエンネアは力強く生きていける。だって世界で一番大好きな人に女として愛されて初めてを捧げられたんだから。」
「そうか。じゃあ、これからもよろしくな。お休み」
「お休み。九郎・・・。ありがとう・・・。」
そうして最初で最後の夜が終わった。


”いなくなった猫”


エンネアを抱いてから二週間後、今日は魔術に関する仕事があり、アルと一緒に晩まで仕事をしていた。
晩御飯はエンネアが用意してくれている。
「ただいまー。ん?鍵がかかっている?」
「どうしたのだ?妾腹ペコだぞ?」
「どうやらエンネアが出かけているみたいだ。」
とりあえずスペアキーで鍵を開けた。
家に入るとキッチンには料理だけが用意してあった。
そしてリビングに手紙が置いてあった。
「書き置きにしてはちゃんとした封筒に入ってるな。」
手紙を読んでみると俺は青ざめた。
「九郎とアルちゃんへ。アルちゃんはもうエンネアがいなくても大丈夫だし、夫婦の家に他の女がいるのはやっぱり良くないし、家を出させていただきます。エンネアはかけがえのない大切なものをもらいました。今までありがとう。どうかお幸せになってください。」
「あの・・・・バカ野郎!どうして今になって・・・!」
「どうした九郎?」
「どうしたもこうしたもねえよ。これをみろ!アル、エンネアを探すぞ!」
手紙を受け取ったアルも即座に事態の大きさに気がついた。

俺達は魔術を駆使してアーカムシティを駆けまわった。だか一向に見つかる気配はなかった。
アーカム・シティの外までエンネアが行ってとしたらどうしようもない。
「アル・・・。なにか・・・良い手はないか・・・?!」
「ううーむ。魔術を駆使してもみつからんとなるとアーカムシティにはいないと考えるのが妥当だろうな・・。」
「なにかエンネアを場所を特定できる魔術はないか?!」
「あったらとっくにつかっておるわ!強大な魔力をもった魔術師なら特定も容易い。だがあの小娘は魔導書をもっておらん!だから一般人となんら変わりない魔力しかない。特定は無理だ!」
「くそう・・・だからって・・・!諦められるかよ・・・!エンネアは大切な家族なんだ・・!」
考えろ・・・!なにかないか・・・!なにかないか・・・!・・・!・・・閃いた!
「アル!エンネアがお前に預けた魔導書があったよな。あれがまだ元々の所有者がエンネアのままなら、エンネアの場所もわかるはずだ!」
「なるほど、その手があったか!」
俺とアルはエンネアの魔導書を使い。エンネアの元へ向かった。

―カリフォルニア砂漠
広大な砂漠の誰もいなくなっていた小屋に猫(エンネア)はいた。
「ここなら住めそうだね。食料ならサバイバルでなんとかできるし。」
「あの二人のことだから今頃は広大なアーカムシティを走り回ってるだろうね・・・。最後まで迷惑かけちゃったなあ・・・。」
二人と過ごした楽しかった日々。それを思い出すと帰りたくなる。でも帰るわけにはいかない。理由がある。
「それにエンネアは一人じゃないから大丈夫。」
そう。一人なら寒くて生きていけないだろう。でも二人いれば寒さはしのげる。だから大丈夫。自分にそう言い聞かせた。

ドンドン!!
突如小屋のドアが風ではない何かに押されている。
「・・・!!」
こんなところに誰が来るのか・・・まさか・・・・?!
ドカァン
「おらああ!!エンネアァァァ!!」
マギウススタイルの九郎がドアを破り突入してきた。
「く、九郎・・・!?どうして?!」
窓のない小屋だから逃げることもできない。
「お騒がせ娘。帰るぞ。」
やっぱりそうだ。彼はいつだってそうだ。そう言うに決まっている。
「それはできないよ・・・。」
でも、それにYESと言えないのが今の自分だ。
「どうして?!」
「妾達との生活が嫌になったのか?!」
そんなわけない。でも帰れないのには理由がある。
「・・・エンネアのお腹には九郎の赤ちゃんがいるの・・・。」
「「なんだって・・・・?!」」
二人は同時に驚愕する。
「エンネアは九郎の正妻じゃないから・・・この子を産んだら九郎にいっぱい迷惑かけると思う。でもこの子を堕ろすのも絶対嫌。だからエンネアの九郎達の前からいなくなったの・・・。エンネアもこの子がいれば寒くな」
パチーン!エンネアが言い終わる前に九郎はエンネアの頬を叩いた。
「・・・!?九郎・・?!」
動揺するエンネアに九郎は力強く、でもどこか優しく言葉を浴びせる
「バカ!それはお前が自分勝手に決めたことだろう!それで俺達がどれだけ寂しい思いをするか!そして生まれてくる子は父親がいないことでどれだけ辛い思いをするかわからないのか?!確かに俺は世間様から後ろから指を刺されるだろうさ!覇道財閥をクビになるかもしれない!でも、家族のお前がいなくなる方が100万倍も1000万倍も辛いんだよ!!」
「九郎・・・。」
「それにだ・・。俺はお腹の子の父親でもあるわけだ。だったらその子の父親としてその子は俺達の子供として一緒に幸せに暮らす権利があるはずだ。それをてめえ勝手な理由で奪おうというのか?!何様のつもりだ!」
「でも、でも・・・!アルちゃんが・・・!」
正妻のアルがいる限りそれは許されることではない。そう言いたかった。けどそれすらも打ち砕かれた。
「確かに、汝に先に九郎の子を身籠られたのは妾も悔しい。だが、それ以上に汝にいなくなれる方がずっと辛い。それに汝の子でも九郎の子なら妾の子でもある。だから戻ってこい。」
「どうだ?エンネア。ここまで言われてもまだ俺達から逃げるのか・・・・?」
逃げれるわけがなかった。九郎に飛びつくしかなかった。
「ごめんなさい!ごめんなさい!エンネア、九郎達のエンネアへの想いを軽く見てた!!もうどこにもいかない!!」
九郎はエンネアの頭を撫でた。
「いいんだよ、エンネア。さあ、帰ろう。俺達の家へ・・。」
「うん!うん!」
「まったく・・。」
泣きじゃくりながらも力強く応えた。
そして本当に幸せな日々がこれから始まった。


”エピローグ”

あれからエンネアは俺の子を産んだ。
瑠璃お嬢様に頼んでエンネアを覇道の施設で過ごしてもらい子供を孤児扱いで引取ってもらった。
後日その子は俺の養子として家に帰ってきた。
と言っても正妻でない女性と子を設けるという不義をしたし無理を言ってお嬢様に頼んだ代償として、俺は出世コースからは外れ社宅も返上した。
そして今の家は懐かしい旧大十字九郎探偵事務所である。
でも、失ったもの以上に得たものの方がはるかに大きいと家に帰る度に感じさせられる。
「ただいまー。」
「おかえりなさい。九郎。」
「パパ〜おかえり〜」
エンネアと2歳になり言葉を話すようになった娘。そして―
「遅かったな九郎。お腹の子も待っていたぞ。」
アルも俺の子を妊娠していた。
これから俺達にはどんな試練が待っているかわからない。でも俺達5人の未来は明るい。
だってそうだろ?俺達は揃っている限り最弱無敵なんだから。
あの魔を断つ剣と呼ばれたデウス・マキナのように。


-Fin-


”あとがき”

こんにちは。初めてお会いした方は初めまして。こんな奴を知ってくれている方はまたお会いしましたね。

今回はアル・アジフルートのハッピーエンドの続編の二次創作小説を書いてみました。
短時間でしあげたのであんまり掘り下げて書けてないですがご容赦を。
今回は公式カプの九アルベースにしてそれをなるだけ壊さずに九エンをどれだけ入れられるかに挑戦してみました。
結局はなるだけ二人の間に入らないようにしてアルちゃんに家事を教えながら信頼を勝ち取り、一度だけ最初で最後の九郎との行為を認めさせる方向になりました。
子供ができるのは2番目であっても二人の愛の結晶みたいなのが欲しい童貞のカプ厨ならではの病気です。

今年も残す所わずかです。皆様良いお年をお迎えください。
そして来年がエンネアに取って良い年になりますように。

最後までお読みいただきありがとうございました。





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