本当の幸せ (最終話)
 


”スマートフォンと・・・”

―大十字九郎探偵事務所
「九郎。スマートフォン買おう。」
「んー?なんでだ?」
夕食をとっている時エンネアがそう言ってきた。
「パケット定額なら二人で月100ドル(約1万円)かからないし、今の時代にインターネットは必須だよ。」
「うむ。一理ある。じゃあ。明日休みだし携帯会社に行くか。」
姫さんの依頼をこなす前の俺なら間違いなく首を縦に振らなかっただろう。
が、今は違う。依頼の前金と成功報酬で俺の銀行の口座には1000万ドル(約10億円)の貯蓄がある。
流石天下の覇道財閥の報酬だけあって奨学金だけで生活していた今まででは考えられない額の貯金額である。
「でも、九郎。ソーシャルゲームとか無駄遣いはダメだよ。」
「そういうところは相変わらずちゃんとしてるな。わかってるよ。」
とは言っても臨時収入でそれだけあっただけで、定収入があるわけではない。
なのでエンネアとは今までとあんまり変わらない生活を送っている。
もちろん細部ではより良い物を買ってはいるが、やはり二人の将来のためということで二人でそうすると決めたからである。

風呂に入った後俺達は寝ることにした。明日は休みだ。
「ベッドも買わなきゃね・・・。」
「ああ・・・そうだな。今でも相当俺はきつい。」
今でも相変わらずソファーで抱き合って寝ている俺達。
でもあの日以来エンネアは胸を押し付けたりと性的なアピールは一切しなくなった。
それでも日に日に身体が成長していく美少女と抱き合って寝る、(狭いからだが)健全な男子諸君ならそれがどれだけきついかは想像するのは難しくないだろう。
「クスッ。その気になったらいつでもどうぞ☆クークー。」
「―!!」
だからさりげないアピールは忘れないあたりは抜け目ない。
エンネアは寝るのはすごく得意で10秒もあれば寝ることができる。
俺は相変わらずドキドキしながら1時間後眠りについた。

―アーカムシティ繁華街
「こちらの定額プランですね。お二人様ですと家族割が適用されまして・・・(以下略)」
「「これでお願いします。」」
というわけで早速携帯会社にやってきたH-Mobaleは覇道財閥系の携帯会社で世界でも当然トップシェアでH-PHONEは中でも特に人気があり、二ヶ月待ちが当たり前だ。
だが、俺は依頼の報酬の一つとして覇道財閥関係者と同等に扱う権利書をもらい即日買うことができた。
「では、引き落とし口座の暗証番号をお願いします。」
「わかりました。」
そういって4桁の暗証番号を押すと店員の顔の色が変わった。
「あ・・・これは大変失礼しました・・・!個室にてご案内致します。」
天下の覇道財閥系の会社とは言え末端の職員はそれ以外の企業とあまり変わらないので俺の貯蓄額に驚くのは無理もない。
「ああ〜ここでいいですよ。そんなに高いのは求めてないし。」
「左様でございましたか・・・。」
こうして俺達はなんなく人気機種のスマートフォンを手に入れた。

「うーん。やっぱりどれも高いな・・・。」
「でも安いのはすぐだめになるって家具修理のお兄ちゃんに聞いたし、難しいね。」
その後デパートの家具専門店に来たのだがやはり高い。
「今」はダブルベッドは買わないのでシングルベッド2つ買うことになるが寝具もろもろ込で二人で3000ドル(約30万円)はかなりの出費だ。
「もうちょっと別の店行ってみるか。」
「そうだね〜。」
とまあこの後4件ほど回ったわけだが、結局どこも似たような値段で大差はなかった。
「九郎〜こうなったら奥の手を使おう!」
「奥の手・・・?なんだそりゃ。」
とエンネアはスマートフォンを出してきた。
「あ・・・・!」
「九郎気付いたみたいだね。そうネット通販!」
ネット通販は今の時代では常識である。
安くて送料手数料がかからないところもザラで、これを使わない手はない。
「早速、メールとか設定した二人ののスマフォで口コミを調べよう!九郎。」
「おう、イエッサー!」
こうして俺達は電脳空間で良いベッドを探すことにした。
―30分後
「九郎。いいのあった?こっちはあったよ。」
「おう。ばっちりだ。流石インターネットだな。じゃあ自分の選んだのを見せ合おうぜ。」
お互い良いと思えるベッドが見つかったようだ。
「いいよ。じゃあせーのの掛け声で見せ合おう。」
「了解。じゃあ、3・2・1・・・。
こういう時は同時に見せるに限る。
「「せーの!!」」
「「・・・・・・・・」」
お互いに沈黙。しばらくしてエンネアが沈黙を破った。俺も応えるように破った。
「・・・・・クスッ」
「・・・・はは。偶然て怖いな。」
それもそのはず。俺とエンネアが選んだのは覇道財閥系の家具会社の扱う「合わせるとダブルベッドになる」シングルベッドだった。
やはり、今はお互いに関係を持つことはできないがいずれはと言う想いからこうなったのだろう。
「でも、九郎と一緒で嬉しかったよ。これにしよう!」
「そうだな。二人で一緒なら文句なしだ。」
早速俺とエンネアは注文した。
1800ドル(18万)の出費だったが、4日後届いたベッドはそれ以上に得たものがあった気がした。


                     □ □ □ □ □ □ □ □ □ □                   


”守れているのか?”

―ライカさんの教会
「「こんにちはー」」
「ロリコンが来たぞー」
「来たぞ―」
「こんにちは九郎お兄ちゃん、エンネアちゃん」
久しぶりにライカさんの教会にやってきた。あの話をするわけだが・・・ガキンチョ共は相変わらずのようだ。
「あらあら九郎ちゃん。エンネアちゃん。よく来たわね〜」
「ライカさん。ちょっと話があるんだけど。エンネアはここで遊んでいてくれないか?」
「はーい。」
「じゃあ九郎ちゃん。奥の部屋にいらっしゃい。」
そう言って俺は教会の奥の部屋に向かった。

「で何?九郎ちゃん?2ヶ月でギブアップ・・・?」
「そうじゃないんだけど・・・ライカさん・・・ごめん・・!」
「いきなり謝られても、困るわよ九郎ちゃん。ちゃんと順を追って話してくれないと」
それもそうだ俺は順を追って経緯を話すことにした。
「ライカさん。ブラックロッヅの壊滅の新聞記事は見た?」
「あーあ、あれね。見ましたよ。九郎ちゃん大活躍だったじゃない。お姉さん見なおしたわよ。」
ブラックロッヅの壊滅は裏で資金援助していた財閥があっただけにニュースになっていたので当然新聞に載っている。
「じゃあエンネアがさらわれたのも知ってるかな?」
「それも知ってます。ちゃんと助けた九郎ちゃん。ちゃんと約束を守ってるじゃない。お姉さんは嬉しいですよ。」
やっぱり知っていたようだここからが本題だ。覚悟を決める俺。
「ライカさん・・・あれ実はエンネアは本当は逃げられたけどわざと捕まったみたいなんだ・・。」
「え・・?どういうこと?!」
「後から聞いたら・・・あの約束してから俺がエンネアの要求を袖にしたり隠し事してるのに不満が溜まってたみたいでさ。それで悪にさらわれたお姫様を演出したかったらしいんだ。」
「なるほどー。それで九郎ちゃんがそれを助ける王子様ってわけね。」
「そうみたいなんだけど、それほどまでに俺に愛されたかったんと知ったから俺言っちゃったんだ・・・いずれエンネアと籍を入れるって・・・。ごめん!ライカさん!」
「・・・・」
俺に真相と約束での件を告げられしばらく沈黙するライカさん。
そして難しい顔をした後優しい笑みで告げた。
「・・・・九郎ちゃん。よく正直に言ってくれたわね。黙っていればわからなかったのに」
「約束を守られなかったらちゃんとそれを言うのは当然だと思うんだ・・・。」
「本当に変わったわね九郎ちゃん。エンネアちゃんのためによくがんばってるのがお姉さんにも良くわかりました。」
「それに・・・私がエンネアちゃんが16歳になってから籍を入れるための推薦人になるのは言ってないのよね?」
「それは言ってないよ。夫婦としても早く一緒になりたいから精一杯がんばるから信じてくれとは言ったけど。」
「なら。セーフね。それに今日エンネアちゃんの表情をみたらあの約束してからあった不信がまったく感じられなかったわ。それだけ深い絆があればこれからどんな障害も乗り越えられるわ。がんばって。」
「ありがとう・・・ライカさん・・・!」
こうして無事話は終わった。
「エンネア帰るぞ〜」
「はーい。」
その後帰る用意をする。
「また来いよ〜二人共〜」
「来いよ〜」
「またね、九郎お兄ちゃん、エンネアちゃん」
ガキンチョ共の見送りの挨拶。
「九郎ちゃん・・・。」
「ああ・・・ライカさん。」
ライカさんの言葉は続かなかったが俺を信じている目なので俺は返事だけした。
そして俺とエンネアは手を繋いで帰った。
夕焼けに向かって歩く二人をライカさんとガキンチョ共にはどう映ったかわからないが逞しく映っているといいなと思った・・。

                     □ □ □ □ □ □ □ □ □ □                   

”ア・ハッピー・ニュー・イヤー”

―Jの自宅
「明けましておめでとうございます!」」
「おめでとうございます。」
「「おめでとうございます〜」」
「みんな元気がいいんだね。おめでとう。」
年が明けた。新年の挨拶回りだ。大学の関係者とライカさんの教会に行った後Jの家に挨拶に行った。
俺とエンネアが挨拶するとJとJの姉とJのお祖母ちゃんが出てきて挨拶を返してくれた。
「大十字さん。立ち話もなんですし家に入っていってくださよ。」
「だいぶ回って疲れたしそうさせてもらうよ。」
しんどかったのでJの家で一休みすることにした。
「ほっほっほっ。じゃあ、おばあちゃんは紅茶と茶菓子でも入れてきますかね。」
「エンネアも手伝うよ。おばあちゃん。」
「そうかい。ありがとうね。」
エンネアとおばあちゃんは仲が良いのでエンネアはJの家でよくお手伝いをする。
「ごめんJ。あたしはこれから仕事あるから行ってくるわ。」
「姉さんがんばってー」
「いってらっしゃい。お姉さん」
Jの姉はカメラマンでほぼ年中無休だ。挨拶だけしてくれると早速仕事へ行った。

リビングでJとJのおばあちゃんとしばらく話をすることになった。
「エンネアちゃんは会う度に大きくなってるね。おっぱいも」
「お、おばあちゃん何恥ずかしいこと言っているんだよ(汗」
「エンネアは九郎のお嫁さんになるために美容にも気を使っていますので当たり前です!(ドヤァ」
「ははは・・・。」
Jのおばあちゃんはエンネアに会う度に同じ事を言うようだが、Jのフォローも虚しくエンネアもドヤ顔でそれに応えるので苦笑いするの俺。
「実際ブラジャーもBカップのじゃきつくなってきたしね。」
「おお、そうかいおばあちゃんも若いころはDカップあってねえ。おじいさんを落したのはおっぱいのおかげだったかもしれないね。ほっほっほ。」
「じゃあ。エンネアも九郎を落とすためにもっともっとスタイルを良くなるようがんばります。」
「そうそう。男なんか性格も容姿も美人でボン・キュッ・ボン(死語)なら簡単に落とせるのよ。」
「「・・・・」」
女同士の会話に言葉を詰まらせる俺とJ完全に二人の世界だ。
10分ほど経ってエンネアとおばあちゃんの話が一段落するとJが口を開いた。
「とりあえず、大十字さんの家族のエンネアさんとこうして皆でわいわい話せて楽しかったです。大十字さん、エンネアさん今年もよろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。じゃあそろそろ俺は帰るとするけど。エンネアはどうする?」
「んーこの後1ドル均一のお店に行って買い物あるし、もう少しおばあちゃんとお話してからでもいい?」
どうやらエンネアはおばあちゃんと話したいことがあるみたいだ。
「ほっほっほ。おばあちゃんはいくらお話しても構いませんよ。」
「じゃあ、Jとおばあちゃん。エンネアをよろしく。」
「わかりました。大十字さん。」
そうして俺はJの家を後にした。

―大十字九郎探偵事務所

「ただいまー。九郎。」
「おかえり。エンネア。」
時計は午後四時を指していた。あれからどうやら2時間以上おぼあちゃんと話をしていたようだ。
今日の晩ご飯の買い物袋を持ったエンネアが帰ってきた。
「じゃあ。九郎そろそろ夕飯の支度をするね。」
「いつもありがとうな。ところでエンネア、Jによるとおばあちゃんは似たような話を繰り返すらしいけど楽しかったか?」
同じ内容を何度もしゃべるのは認知症の典型的な症状のひとつだ。
「確かにそういうところもあったけど、それってそれだけおばあちゃんが伝えたいことだったり思い入れがあることだったりするわけだしすごく楽しかったよ。」
「そうか。おばあちゃんはいっぱい思い出があるからな。」
「それにエンネアが知らないこともいっぱい知ってるしね。九郎攻略の参考にしています。」
「お、おう。それは良かったな・・・。」
というかそもそも俺達は将来を誓い合った仲だし今更攻略も何もないと思うのだが、変なことを吹きこまれていないか心配になる俺。それを察したのかエンネアが満面の笑みで問いかけてきた。
「エンネアは九郎との思い出をいっぱい作りたい。おばあちゃんに負けないぐらい。九郎はどう?」
「俺もそう思う。これからもいっぱいいっぱい思い出を作ろうぜ・・・!エンネア!」
「うん!」
年の始まりはこれからの一年がより充実したものになると確信できた日だった。


                     □ □ □ □ □ □ □ □ □ □                   


”春の二人”

―アーカムシティ市街地

それから時は経ち4月になった。エンネアは2月の高卒検定を軽くパスし、春の日に俺達はエンネアの衣服を買いに来た。
エンネアは育ち盛りだから服の買い替えが必要になったからだ。
「ねぇねぇ!九郎!これ似合う?!」
「おう・・・かわいいよ・・!」
下着売り場は流石に俺は行かなかったが衣服売り場はエンネアが感想を聞きたいとのことなので一緒に行くことにした。
エンネアが来たのは青いワンピースだった。これから暑くなる季節に青色は涼しげで且つピンク髪のエンネアを引き立てる。
「じゃあーこれにしようっと。今まで赤が基調の服が多かったし。気分も変えたしね。」
「それでいいんだな。じゃあレジへ持って行こう。」
「はーい。」
そうしてエンネア用の青のワンピースと青の靴下と青の下着を購入した。

―大十字九郎探偵事務所。

家に帰るとポストにチラシがかなり入っていた。
買い物全般はエンネアの仕事なので俺はさっと目を通すぐらいで基本じっくり見るのはエンネアだ。
「九郎。チラシにアーカム川の河川敷でお花見祭りやるみたいだよ」
「お、あれは覇道財閥の創始者の覇道鋼造がアーカム川に10000本の桜を植えたのが始まりったお祭りらしいな。そうだな明日行くか?」
「行こう!行こう!」
「じゃあ決まりだな!明日お弁当持って行こう。お弁当はエンネア頼むぜ。」
そうと決まれば行動するのが早いのが俺達だ。
それはエンネアに引っ張られてる感は否めないが俺達ということにしておいてくれ。

―アーカム川の河川敷

翌日俺とエンネアは予定通りアーカム川の河川敷のお祭りにやってきた。
「九郎〜早く早く〜。」
「エンネア。早いっての〜まってい〜」
相変わらず元気いっぱいで俺を引っ張るエンネア。
絶望に囚われた世界ではどこか笑顔に影があったがそういうのが一切無く俺は心の底から嬉しかった。
「ラムネ・・・?なにこれ?」
「ああーそれか。日本のお祭じゃ定番なんだよ。簡単に言えばソーダだけど。ラムネにはサファイア色のビー玉が入っているんだよ。」
日本のお祭ではメジャーだが海外では珍しいものが並ぶのが覇道財閥の系のお祭りの特徴の一つだ。
覇道の一族が東洋系なのもあるらしいが、一説によると次期総帥の覇道瑠璃が幼い時に祖父の覇道鋼造と日本へ行った時の影響との噂もある。
「んー九郎。だいたい味は想像つくけど。買っていい?」
「もちろん構わないぞ。」
家計のやりくりはエンネアがやっているのだが律儀にも俺の許可を求めてくる。
「じゃあ。おじさん。1つください。」
「あいよ。かわいいお嬢ちゃんだからお兄ちゃんの分もオマケだよ・・・!」
「ありがとう。おじさん。」
店のおじさんは気前のいい人らしく2つにおまけしてくれたようだ。
元気よくエンネアが戻ってくる。
「九郎。一緒に飲もう」
「おう。俺も懐かしいしな。」
こうして二人仲良くラムネを飲むことにした
「ただのソーダと違う気がする・・。」
「だろうな、祭りで飲むラムネはまた別格なんだぜ。」
「それにビー玉がコロコロ転がってるだろ。これがまたなんとも言えない不思議な魅力なんだ。」
「音でも楽しめるって素敵・・。」
エンネアは楽しそうに瓶の中に入っているビー玉を転がしていた。
「それは後で出してやるよ」
「出せるの?」
「ああ・・・!」
「じゃあ、お願いします。」
こうしてエンネアとの思い出の1ページのラムネはビー玉となって残ることになった。

1時間後河原の桜の木の下で昼食を取ることにした。もちろんエンネアのお弁当だ。
「昨日日本米が買えて九郎が気に入ったみたいだし。今日はおむすびにしてみました!」
「おおーありがたい。中身は何?」
「食べてからのお楽しみです♪」
おいしそうな丸くておおきなおむすびが3つお弁当箱に入っていた。付け合せはタクアンだけという極めてシンプルなもの。
「じゃあ。いただきます〜」
「いただいてください♪」
早速1つ目を食べることにした。
「おお・・・これは?!鮭・・にしては脂がのってるな。」
「それは鮭のハラスて言って脂が良くのっている部分だよ。でも新鮮なものだからしつこくないと思うよ。」
「うむ・・・うまい・・・!」
そう言うとあっという間にたいらげた。
2つ目に自然と手が伸びる。
「・・・これは天むす?!」
「あったりー!!スマートフォンで日本のおむすびは調べました。日本の中部地方名物の天むすです。」
「うん!これもうまいよ!!」
これもあっという間に平らげた俺は3つ目を手に取り口に入れた。
「最後は・・・?!具がない?!」
「最後はあっさりと塩おむすびだよー。でも天然塩だからお米のおいしさが一番よく引き出せるんだよね。」
「なるほど。たしかに言われた通り前の2種とはまた違ったおいしさで・・・相変わらずすごいよ!エンネア!」
「うふふ♪任せて〜♪」
そうしてすっかり花より団子になった食後に日本茶を飲んだ。

「ふああ・・・眠くなってきた・・・・。」
「あ・・。九郎。大丈夫?」
しばらく桜をみていたのだが満腹感も合わさって眠くなってきてしまった俺。
「ポカポカ陽気だし・・・ちょっと寝るわ・・・。」
「そう?エンネアが膝枕してあげる♪」
「じゃあ・・・お願いします〜」
「その代わり九郎の寝顔をたっぷりみさせてもらうね♪」
「どうぞ〜」
公共の場で少し恥ずかしい気もしたがエンネアの太ももは以前してもらったことがあり、心地が良いので提案を受け入れた。
時々エンネアの満面の笑顔をチラッと見ながら俺はしばらく眠りについた。
その後起きたのは午後5時のことだった・・・。どうして起こしてくれなかったのかエンネアに尋ねると「九郎の寝顔がかわいかったから♪」と答えられ恥ずかしくなり家路についた。


                     □ □ □ □ □ □ □ □ □ □                   


”誕生日”

―Jの自宅

「九郎とJさん進級おめでとう」
「九郎ちゃん、Jおめでとう」
「「ありがとうございます!」」
まずエンネアとJのおばあちゃんが進級祝いとしてくれた。
「大十字さん、エンネアさんお誕生日おめでとうございます。」
「二人共おめでとう。」
「ありがとうございます!」
「ありがとう。Jさん、おばあちゃん」
その後俺とエンネアの誕生日を祝ってくれたおばあちゃんとJ
9月9日は俺とエンネアの誕生日だ。同時に9月がアメリカの大学の新年度が始まる次期でもある。
俺は主席なので文句なく進級し、同じく進級したJのお祝いも兼ねてJの家で誕生日会をすることになった。
「俺は22。エンネアは14歳だな。時が経つのは早いね。」
「九郎もまだ若いんだからそんなじじ臭い事言わないの。」
「そうよ。九郎ちゃん。まだ人生の4分の1ぐらいしか生きてないんだからそんなこと言うものじゃないですよ」
「すみましぇん」
「「「ハハハハ!!」」」
祝の場なのにいきなりお説教をくらいJの家に家に笑い声が木霊する。
「でもね・・・エンネアちゃん。おばあちゃんもJが生まれた時やおじいさんと一緒に過ごした時間も昨日のように感じるの。だから九郎ちゃんのいうことも間違ってはいないのよ・・・。」
「そうなの?おばあちゃん。」
「そうよ。それは歳を取るほどそうなるの。」
「・・・・」
エンネアは絶望に囚われた世界では13歳以上の誕生日は迎えたことがない。
それもその歳まではブラックロッジで幽閉されてたわけだからそう感じる無理もない。
「わからないかしらね?楽しいことや嬉しい事の時間と嫌なことや辛いことの時間は同じ長さに感じないでしょ?」
「すごく良くわかったわ!おばあちゃん。九郎が学校に言ってる時間より九郎と一緒にいる時間の方があっと言う間に経つもの。」
「僕達が嫌な授業の経つ時間が遅く感じるようなものでしょうかね?大十字さん」
「だいたいそんなところじゃないのかな・・・?」
エンネアの過去を思いだし少し神妙な表情をしていたがエンネアが納得したのでそう答えた。
「九郎ちゃん、エンネアちゃん、J。この先の人生は長いわ。良いことも嫌なこともいっぱいあると思う。
「でもね一度しかない人生なんだから精一杯生きて充実した人生にしなさいよ。」
いつになく真剣な表情でおばあちゃんが人生の先輩としてアドバイスする。
「いつも聞いてるし。わってるよおばあちゃん。」
「おばあちゃん。わかってるよ。」
「ありがとう・・・。おばあちゃん・・・。」
俺達三人は返事をするがやはりエンネアは少しどこか影があった。
おばあちゃんにエンネアの過去は知る由もないし、当然悪気もない。
だから気にするなと、俺は隣に座っているエンネアの手をギュッと握りしめた。
「さあさあ、こんなお説教してごめんさいね。せっかくの料理がまずくならないうちに食べましょう」
「じゃあ皆さん食べましょう。」
「「「いただきまーす」」」
その後4人でプレゼント交換や俺の一発芸とかでお誕生日会は大いに盛り上がった。
プレゼント交換で俺はJのプレゼントの「チェスセット」。
エンネアはおばあちゃんの「手編みのマフラー」。
Jは俺のプレゼントの「高級手帳」。
おばあちゃんはエンネアのプレゼントの「世界の神話の本」。
をそれぞれ受け取った。
全員秘密にしていただけに喜びも倍増といった所で充実した時間をすごした。

―大十字九郎探偵事務所

事務所に戻った俺とエンネア。
「エンネア。今日は久しぶりに一緒に寝るか。誕生日だし・・・。」
「九郎・・・やっぱり気を使ってくれてる・・?」
やはり感付かれてしまったようだ。
おばあちゃんの言葉で自分の過去を思いだし少し辛そうにしてたエンネアを見たから提案したことを。
「んーまあ・・それもある。でもな俺と抱き合って寝ればそんなモヤモヤも吹っ飛ぶぞ。」
「じゃあ・・そうする!」
そう言ってその日抱き合って寝た。俺達は楽しくも少しほろ苦い誕生日を過ごした。


                     □ □ □ □ □ □ □ □ □ □                   


”就職と御伽話”

―大十字九郎探偵事務所。
一年後俺は就職活動をしていた。
と言っても、ブラックロッヅの壊滅の件で功績がある俺は覇道財閥からだいぶ前から声がかかっており事実上内定をもらったのと同じだ。
そして今日はその面接日
「九郎。がんばって!」
「ああ・・!!良い知らせを待っててくれ。」
すっかり大人の体型になって大人っぽくなったエンネアの見送りの後。
就活服でバッチっと決めた服飾で覇道財閥の本社へ向かった。

―覇道財閥本社兼覇道家自宅

「お嬢様。大十字様がお越しになりました。」
「では、例のの手はず通りに頼みましたわ。ウィンフィールド。」
「了解しました。お嬢様」
面接をするのは九郎を採用すると決めた瑠璃本人だ。
ミスカトニック大学の隠秘学科の主席の大十字九郎を採用するのは決まっている。
が、ある疑問をぶつけるために瑠璃は直々に面接をすることにした。

コンコンとドアノックがされる。
「どうぞ。」
「失礼します。瑠璃お嬢様。この度は御社にお誘いをいただきまいした。大十字九郎です。」
「どうぞ。お掛けになってゆっくりなさってください。貴殿の採用は決まっていますのでちょっとした私の疑問に答えていただくだけです。」
「・・はい。わかりました。」
よくわからないがとりあず無礼でない程度に椅子に腰を掛けるた。
「大十字さん。あのブラックロッヅの事件からいろいろ疑問が出てきました。嘘偽りなく答えてくださいまし。」
「・・・わかりました・・・!」
やはり感の良い姫さんだけあって何か感付いたようだ。
「あの後ブラックロッジの魔術師が幼い少女がトラウマになるほどのことをされたとの証言をしました。実際少女を写真見ると悲鳴をあげ震えるほどの・・・です。」
「加えてブラックロッヅの本拠地に残されていた靴型。あれは尋常ではない脚力で踏まれたもの。そして靴型のサイズから子供のものと判断されています。」
「―!!」
まずい。姫さんはエンネアの正体に気づきかかっている。自分の脈拍があがっているのがわかった。
「お嬢様。大十字様が脈拍や息があがりかなり動揺されています。」
ウィンフィールドは別室で特殊な装置で大十字九郎の心身の状態を図る装置を前にして小型のイヤホンをつけている瑠璃に情報を送っている。
「そこでブラックロッヅにさらわれた少女すなわち、あなたが同居している「エンネア」という名の過去を調べてみました。」
「ですが、彼女の過去はあなたに拾われる前の情報は覇道財閥の情報網でどれだけ調べても一切出てこないのです。そしてある結論に至りました。彼女は本来この世界にはいなかった存在だと。荒唐無稽ですが私の感がそう判断しました。」
「ちなみに大十字さんにはまことに申し訳ありませんが、嘘偽り等はこの部屋では一切通じないように細工をさせていだきました。」「あの少女の過去について話てくださいますか?」
「・・・・。」
どうやら隠し事や誤魔化したりはできないらしい。
俺は過去の世界で共に戦った姫さんにならと過去を告げることにした。
「仰るとおりです。エンネアはある存在によって別の世界からこの世界に送られてきた、この世界にはいなかった存在です。」
別室にてウィンフィールドは瑠璃に伝える。
「嘘は言っていないようですお嬢様。」
それを聞いた瑠璃は続けて問う。
「では。その「ある存在」とは何者です?」
「話すと少し長くなるけど御伽話として聞いてくださるとありがたいです。」
「わかりました。」
そうして俺は過去の世界について話すことにした。
世界は絶望に囚われ無限ループしていたこと。
ブラックロッジという巨悪組織があったこと。
俺と魔道書の化身アル・アジフ、覇道財閥の作ったデモンベインというその組織と戦った存在がいたこと。
そしてその無限に繰り返される絶望の世界に囚われ殺され続けた。少女・・・俺の今のパートナーのエンネア存在。
その絶望を打ち破り旧神となり邪神と闘い続ける並行世界の俺とアル・アジフ。
二人を影から見守りそしてその二人によってこの世界に送還され、過去が作られたエンネア。
余計な話はある程度省略したが、御伽話は実に4時間にものぼった。
「一切嘘偽りは機器からは伺えませんでした。」
ウィンフィールドがそう告げそれが偽りではないと知った瑠璃の反応は・・・。
「ありがとうございました。大十字さん。私の「今までの」疑問は晴れました。」
「そうですか。信じてもらえて光栄です。」
安堵した九郎を見た瑠璃はその安堵を忘れるようなこと九郎に問う。
「ですが、ここでまたあらたな疑念がでてきました。大十字さんがその疑念を晴らす答えをしてくださればこの面接は終わりとしましょう。」
「なんでしょうか・・?」
「大十字さんの今のパートナーのエンネアという少女は、その世界ではブラックロッジという魔術で暴虐を尽くす悪の組織に幹部として所属していたのですね?」
「ああ・・・本人は拘束、幽閉され無理やりとは言え肩書はそうです。」
それは事実なので否定できない。
「では、彼女が魔術によって絶望から解放されたこの世界を再び混沌に陥れる可能性はありませんか?あるのでしたら覇道の監視下の地下施設にいてもらう必要もありますが。」
「・・・・」
もっともな疑問だ。
―だが俺はエンネアを想った。
絶望に囚われた世界で俺を慕ってくれたエンネア。
その絶望から逃れるために俺に抹殺を望んだエンネア。
並行世界の俺とアルを見守ってくれたエンネア。
俺のもとに帰ってきてくれて時に真剣で、時ふざけ、時に怒り、時に微笑んでくれたエンネア―
答えたはただひとつ。
「それはありえません。エンネアは俺が選んだ人生のパートナーですから。」
一点の曇もない表情と声ではっきりそう告げた。
「・・・・」
客観性が皆無の主観に満ちた回答である。
その回答のためにこの世界を再び混沌に陥れる可能性を野放しにしていいのか・・・。
瑠璃は暫く沈黙した後口を開いた。
「わかりました。大十字さん。あなたを信用いたします。ですが条件があります。それを飲んでいただけるのでしたらですが。」
「はい・・・。」
覚悟を決めるしかない俺、大十字九郎。
「彼女、エンネアさんは16歳になった後覇道財閥で雇うことに致します。半ば監視下に置くことと同意になりますが、プロ級の家事スキルを持っているならこの覇道財閥に貢献してくださるでしょう。」
「え・・・・?!」
姫さんのの提案に驚愕する俺。
「大十字さんは人生のパートナーと同じ職場で働くのはお嫌いですか?」
「いえ、まったく・・・。」
「では、その件をあなたの人生のパートナーに告げ了承をもらってきていただけますか?それでこの疑念は晴らしたことに致します。」
「ありがとうございます・・・!」
いい意味での不意打ちに力いっぱい応えた。
ガチャ。執事さんが入ってきた。
「大十字様。お疲れ様でした。これにて面接は終了です。お嬢様がおっしゃった件だけはお忘れなきよう。」
「はい。では失礼します。」
そうして部屋を出ようとした時瑠璃が引きとめた。
「―大十字さん・・・。」
「はい・・・・?」
「エンネアさんがここに雇われたましたら、是非二人の御伽話の詳細を聞かせてくださいますか?」
「はい、わかりました。瑠璃お嬢様。」
瑠璃の真剣な想いに応える日が来るのを楽しみに思いつつ俺は覇道邸を後にした。
後日エンネアも俺と同じ職場に通えるならと快く承諾し、俺とエンネアの覇道財閥就職が決まった。


                     □ □ □ □ □ □ □ □ □ □                   


”命の焔”

それから更に1年弱経った後、覇道財閥に新設された魔術部門に主任として就任した俺は充実した日々を送っていた。
当然世界の大財閥の一部門を任されるだけあって相応の教養を身につけたり、仕事は多忙であり変わっとことも多い。
しかし、変わらないこともまた多く、未だにライカさんの教会には足を運ぶし、そして何より―
「おかえりなさい。九郎。」
「ただいま。エンネア。」
エンネアはもうすぐ16歳になる。髪もハネたショートヘアからセミロングにになり、スタイルも抜群によくなり、ぐっと大人になっていた。
その上美人なので、買い物やJの家に遊びに街に出かけるとナンパが絶えず、ミス・アーカムとして雑誌に紹介されたこともある。
そこは変わったところであるが、俺は未だに廃業した大十字九郎探偵事務所から通っている。
覇道財閥の一部門の主任にはあまりに不相応であるが、「ケジメ」を付ける時まで待って欲しいと瑠璃お嬢様に頼み了承を得た。
もうすぐ日付が変わることであるが、今日もエンネアは今まで通り出迎えてくれる。
―プルルル
電話だ・・・夜遅くということで俺への電話かと思ったがエンネアが電話に近かったので出た。
「はい、もしもし。大十字です。あ、Jさん?」
どうやらJのようだ。なら変わらなくてもいいだろう・・・と思った瞬間エンネアが青ざめた。
「おばあちゃんが事故・・・?!はっはい!今すぐ九郎と一緒に向かいます!場所はアーカムシティ第5病院ですね!」
「・・・・!!」
エンネアが電話を切ると俺達は大急ぎでアーカムシティ第5病院へ急いだ。

―アーカムシティ第5病院

病院に付いた俺達は総合案内所でおばあちゃんの病室へ向かった。どうやら徘徊してた時に車に轢かれたようだ・・・。
集中治療室の前でJが立っていた。
「J!おばあちゃんは・・・?!」
「Jさん・・・!」
「・・・・・」
Jは無言で首を横に振った。Jのお姉さんはぐったりしている。
どうやら助かる見込みはないらしい。
「Jさん、お婆さんの意識が戻りました・・・!」
主治医の先生集中治療室から出てきてそう告げると俺達は中に入った。
「「「「おばあちゃん・・・!」」」」
「・・・みん・・な揃って・・よく・・・来たね・・・」
俺達が一斉に声をかけるとおばあちゃんは反応してくれた。
「どう・・やらわたし・・・はここまで・・・のようだね・・・さっき・・・天国のおじいさんに・・・会ったもの・・・。」
「そんな・・・こと・・・!ない・・・!」
「そうだよ・・・おばあちゃん!!」
Jが涙目でエンネアが真剣な表情でおばあちゃんに話しかける。
俺とJのお姉さんはおばあちゃんの無残な姿に無言だった。
「いいんだよ・・・人は・・・いつか・・・死ぬも・・・の・・・なんだ・・・から・・・。」
「みんな・・・あたしの・・最期の・・・言葉を・・・聞い・・てくれる・・・かい・・・。」
必死に最期の言葉を振り絞ろうとする痛々しいおばあちゃんの姿にエンネアが耐えかねたのか・・・病室の外に出ようとするが俺が引き留める。
「エンネア・・・!おばあちゃんは最期の命の焔を燃やしてくれてるんだ・・・!ちゃんと聞くんだ・・!」
「・・・!」
それをみたおばあちゃんが命の焔を燃やして言う
「おばあちゃんがね・・。生まれた時・・おばあちゃんの・・・お母さんとお父さんが・・・笑顔で出迎えてくれたの・・・。」
「そうして・・・おばあちゃんの・・・・お母さんとお父さんが・・・逝く・・・時・・・あたしやおじいさん・・・そしてJの両親が泣いて・・・送ってくれたの・・・その時・・・お父さんとお母さんはとてもいい笑顔だったわ・・・。」
「わかる・・・?人は・・泣いて生まれ・・・笑顔で迎えられるの・・・そして笑顔で・・・逝き・・・泣いて・・送られるのよ・・それは・・・人がずっと・・続けてきた・・命のバトンリレー・・・。」
ポタ・・・ッしずくが落ちる・・・。
「JとH・・・お前達の・・・お父さんとお母さんも・・逝く時はお前達が赤ん坊だったけど・・・笑顔で迎えてくれたのよ・・・」
「「お祖母ちゃん・・・」」
ポタポタ・・・しずくがさらに落ちる。
「エンネアちゃん・・・は・・・孤児だから・・笑顔で迎えてくれた・・・人はいなかったかも・・・しれないけど・・・。でも・・・命の・・バトンリレー・・・を引き継いで・・・九郎ちゃんと・・・結婚して子供・・ができら・・・笑顔で迎えてあげなさいよ・・・・」
「お祖母ちゃん・・・!絶対そうする・・・!」
エンネアの目には涙が溢れていた・・・。
「九郎ちゃん・・・エンネアちゃん・・・は辛い過去を・・・背負ってるかもしれないけど・・・、あなたが・・・それよりもずっとずっ・・・と・・・幸せにして・・・あげな・・・さいよ。」
「大十字九郎・・・ここに誓います・・・!必ず・・・エンネアを幸せにすると・・・!」
俺も涙目だからしっかりとおばあちゃんをみて応えた。
「みんな・・・ありがとう・・・ああ・・・お前達・・・・の・・眩しい・・ほど・・・輝いている・・未来見える・・・!」
「「「「おばあちゃん・・・・!!!」」」」
―皆が涙で見送る中おばあちゃんは永遠の眠りについた・・・。

―帰路
おばあちゃんの葬儀は3日後行わることになった詳細が決まり次第改めてJが連絡をくれることになった。
「エンネア・・・」
「グズ・・・ッ・・・」
エンネアは俺にの腕に抱きつきながらずっと泣いていた・・・。
「エンネア・・・おばあちゃんは最期の命の焔を燃やしてお前の凍ってしまった悲しみの感情を蘇らせてくれたんだよ・・・。だから、精一杯生きてそれに応えないとな・・・。」
「うん・・・。」
「・・・・ありがとう!」
エンネアが無限に繰り返される絶望で忘れてしまった命の大切さ、悲しいという感情と「涙」・・・それを取り戻してくれたおばあちゃん。に心から御礼を言った。
そして俺は元からあった決意をより強固なものにしたのであった。


                     □ □ □ □ □ □ □ □ □ □                   


”ずっと一緒”

―ライカの教会。
後日お祖母ちゃんの葬儀は無事行われ。
今日は節目の俺とエンネアの誕生日9月9日。
エンネアと俺はライカさんの教会へ向かった。
俺はエンネアに内緒であるものを持っている。

「九郎。今年はライカお姉さんのところで誕生日祝いするの?」
「んーまあーそんなところだ。じゃあ入るぞ〜」
「こんにちは〜」
ギィィと扉を開けるとパンパンパン!とクラッカーが鳴る。
「「?!」」
「「「九郎お兄さん、エンネアさんおめでとうー!」」」
ライカさん所の子供達がいきなり派手な出迎えをしてくれた。
「大十字さんよく来たわね。いらっしゃい。」
「いやどうも・・・」
「こ、こんにちは。」
不意打ちに驚くエンネア。
ライカさんは俺がちゃんとした職に付いてからは「九郎ちゃん」ではなく「大十字さん」と呼んでくる。正直まだ慣れないのだが節度は大事ということで呼び方は変えてくれない。
ライカさんが真剣な表情で俺を見た。
「大十字さん・・・・!よくがんばったわね!」
「ああ・・・約束は守ったよ・・・!ライカさん」
「約束?」
俺が力強く応えるとライカさんが手をあげて皆に告げた。
「今日。大十字さんがエンネアさんがこの教会に来たのは誕生日を祝うものと言っていましたが、それ以上に大切なことがあります。!!」
「「「「「それ以上に大切なこと??!」」」」
エンネアとライカさん所の子供達がハモる。
「実は今日はエンネアさんが結婚できる歳になった日でもあるのです・・・!」
「「「「・・・・」」」」
「まじかよ・・・すごい!九郎お兄さん・・!エンネアさん・・・!」
「ヒューヒュー」
「ゴクッ」
「え・・・・え、ええええええ??!!!!」
エンネアと子供達は沈黙の後四者四様の反応を見せる。
特にエンネアはみるみる顔が赤くなっていく。
それをみてすかさず俺がエンネアの前にひざまずき手を取る。

「ずっとこのことを隠していた罪を償うため・・・!そしてなにより今までずっと支えてれた感謝として・・・!この大十字九郎・・・!エンネアとこれからは夫婦としてずっと一緒に歩みたい・・・!返答をお願いします・・!」
大十字九郎一世一代のプロポーズだ。

「「「「「「「「「「「SAY!YES!SAY!YES!SAY!YES!SAY!YES!SAY!YES!SAY!YES!」」」」」」」」」」」
っていつの間にかエンネアの知り合いやJとそのお姉さんアーミティッジ爺さんとシュルズベリィ教授、瑠璃お嬢様と執事さんと職場の同僚達も駆けつけ「SAY!YES!」=「はいと言え」とエンネアを後押ししてくる。ライカさんがやってくれたようだ。

エンネアは混乱していたがしばらくすると顔を真っ赤にして応えてくれた。
「は・・・はい・・・!こちらこそ・・!こ、これから・・・!!も・・!ずっと一緒・・・!に・・・!いてください・・・!!」
応えは当然YES!

一瞬会場(教会)が静まったと思ったがすぐに爆発した。
「「「「「「「「「「「イェアー!!!!!!!!」」」」」」」」」」」
「みんな!ありがとう!!ありがとう!!」
「・・・・・」
俺が皆にお礼を言う中エンネアは一人意識が吹っ飛んでる感じだった。
「ほらエンネア・・・!」
「は、はい?!!」
エンネアが俺の声に飛び跳ねた。
今日のエンネアはつくづく反応がおもしろい。
「これを・・・・!」
「・・・・!!」
俺が誕生石のサファイアの結婚指を左手の薬指に通すと夢でないことがわかったようだ。
「「「「「「「「「「「おめでとうーーー!!!!!!!」」」」」」」」」」」
パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!大量のクラッカーが鳴る。
「皆さん!!ありがとう・・・!!ございます!!今日からは・・・!!大十字エンネアとして・・・!!ずっと・・!!この大十字九郎と・・・・!!共に歩みたいと・・・!!思います・・・・!!」
エンネアは嬉し涙を流しながら皆さんに応えた。
「エンネア・・・!!!」
「九郎・・・・・!!」
「チュッ」
俺達は名前を呼ぶと抱き合いキスをした。
その後大量のシャンパンかけが始まり教会はお祭りの会場となった。
俺もエンネアはもちろん皆は腹筋が痛くなるほど・・・いや、痛くなってもずっと笑い続けた。
そして時刻が午後3時半を回った頃、ライカさんが皆に告げた。
「さーさー皆さん!これから法的にも夫婦になるために二人は役所に行かなくてはいけません。新しい船出を見送りましょう!!」
「え?でもこの格好じゃ・・・。」
シャンパンまみれの格好だから当然無理であるが。
「そ・こ・は大十字さんがぬけめなく。」
と言って事前に教会に預けたエンネアと俺の服。
俺はいつもの格好。エンネアは青いワンピースをに着替えた。
そう後俺達はライカさんの推薦状と共に役所に向かった。
もちろん皆の大きな声の後押しを受けながらである。
こうして俺達は公に夫婦になった。

―元大十字九郎探偵事務所

「九郎・・・・・!」
「エンネア・・・・!」
家に戻ると戻ると抱きしめあった。
この後の言葉は要らない。
俺達はシングルベッドを連結させダブルベッドにし再会して三年越しの初めての夫婦の営みを行った。
エンネアはずっとずっと夢だった初めてを俺に捧げられ途中涙を流したりもしたが、それにはずっと及ばないが三年間我慢した想いを思いっきりエンネアにぶつけ・・エンネアも受け止めてくれた。
それはそれは熱い熱い熱い夜だった。

その愛情行為が終わった後俺は決めていたことを切り出す。
「なあ・・・エンネア。これを期にこの事務所を出て、覇道財閥の借家に移ろうと思う・・・。俺達の新しい人生の区切りとして。」「あなたがそういうなら、わたしは不満はないわ。」
「実はもう手続きは済ましてあるんだ。なので朝になったら一緒に片付けをしよう。」
「わかりました。あなたも協力してくださいね。」
「ああ・・もちろんだとも。」
いつの間にか九郎ではなく「あなた」と呼ぶようになっていたエンネア。夫婦だから当然か。
そう言って俺達は眠りについた。


                     □ □ □ □ □ □ □ □ □ □                   


”別れと新しい出会い”

―夢

下もなく上もなく右もなく左もない見渡す限りクリアグリーンの空間
ああ・・・これ夢だ。となると当然・・・・。
「久しいな。「元」我が主。」
「やっぱりお前かよ。アル」
いた、やはり俺のかつてのパートナーのアル・アジフだ。

「九郎。汝・・・今・・幸せか?」
「ああ〜もちろん。俺の嫁はどっかの古本娘と違って、家事炊事も完璧で、気立てが良くて、スタイルもよくて言うことなしだぜ。正直俺が旦那で申し訳ないぐらいだ。」
「言ってくれるな・・!妾の旦那もどっかのヘタレと違って強くて、頼もしくて、そしてなにより神様だからな・・・!」
「「・・・・」」
お互いの嫁自慢と旦那自慢のあと沈黙した。そして同時に沈黙を破った。
「プッ・・・!」
「フフッ・・!」
「「アハハハハ!!」」
笑い合うかつてのパートナー同士。
「九郎。ここまで吹っ切れているとはな。これからはもうそちらの世界に「迷惑はかけても」助けないぞ。」
「にゃろ!アルも俺とエンネアがイチャイチャしているところを嫌と言うほど見せつけてやるから覚悟しろよ」
「迷惑をかける」の意味がわらないがこう返答した。
「九郎・・・。エンネアと幸せにな・・・。」
「ああ。アルもそっちの俺と幸せにな・・・。」
そう言ってアルは光になり姿を消し、俺は黙って見送った。

―元大十字九郎探偵事務所前
次の日の朝俺達は片付けと荷物まとめ終え、覇道財閥系の引越社が荷物を新しい家に送って行った。
「ねえ、あなた。昨日夢でアルちゃんと会ってたの?」
「あーまた寝言聞かれてたのか。そうだな、ここを出る区切りのようにあいつにも今後、夢でも会わないと別れを言ってきたよ。」
「それで後悔していない?」
かつてのアルと俺の絆の強さを知っているエンネアなら当然の疑問か。
だが、俺は一切の曇りも迷いもなく応える。
「俺にはもうこれからずっと一緒に歩むお前というパートナーがいる。後悔なんか微塵にもないよ。」
「あなた・・・!」
抱きついてきたので抱き返す。
3分ほど抱き合って俺は少し離れた。
「なあ・・・ここの家に今までお世話になったお礼を言わないか・・・?」
「あなたの言う通りね。一緒に言いましょう。」
ずっと俺とエンネアそしてかつてのアルを支えてくれた「元」大十字九郎探偵事務所にお礼を言うことにした。
「じゃあ。3・2・1」
「「今までずっとありがとう。そしてさようなら・・・!」」
かつてのパートナー:アル・アジフと大十字九郎探偵事務所との別れ・・・そして新しい人生の始まりであった。

―新大十字九郎宅

新しい借家は覇道財閥の借家だけあって家と言うよりは邸宅と言った方よさそうだった。
それでも俺の妻は就職した覇道財閥のメイド部隊の仕事をこなしつつ家事炊事もなんなくこなす。
そして俺達は家に一緒にいる日はお互いに求め合った。
仕事も順調で覇道財閥と傘下の会社が魔法関連のヘルプを求めた場合迅速に対応し、確実に財閥内での地位を上げていった。
妻もメイド部隊では最高クラスの新米のメイドを教育を担当する、Aランクにわずか4ヶ月でのし上がった。
そんな順調なある夏の日、自宅で妻が話しかけてきた。
「あなた。私産休取ろうと思うの。」
「え?それって・・?!」
「クスッ言葉通りよ。今日覇道財閥直轄の病院で検査受けたの。パパ♪」
「・・・・!」
「キャッ!!」
察した俺は無言で抱きついた。
「そうか・・。ママもおばあちゃんの言ってた通り命のバトンリレーに加わったわけだな。嬉しいよ!」
「私も嬉しい・・・!元気な子を生むからね。」
「体には十分気をつけるだだぞ、お前に協力できることは可能な限りするから。」
「ありがとう。でも、あなたご奉仕するのが私の生きがいだからそれは奪わないでね♪」
「かなわないな・・・。」
こうして新しい命を授かったエンネアは、3ヶ月後育休を取ることにした。

―10ヶ月後
エンネアのつわり等があったものの自身の手で解決し、妻のお腹はみるみる大きくなり早くも臨月を過ぎ春の陽気の休日だった。
「がんばるのはいいけど。ずっとそんなに大きなお腹で家事をされてもなあ。もう少し頼ってくれよ。」
「いつもいってるでしょ。これは私の生きがいですから、奪うのは許しません♪」
「うっ・・・」
今のはかなり本気っぽかったので引くしかない。あれから妻は妊娠前と変わらない生活を送っている膨らんだお腹がジャマになってどうしようもない時以外はほとんど頼ってこない。
「じゃあ、洗濯物を片付けてきますね。」
「ああ、何かあったら呼ぶんだぞ・・。」
「わかってますよ♪」
そう言って別室へ向かった。
・・ガタン!!10分後別室で異様な物音がした。
「―!!」
俺は大慌てで別室に向かった。
「お前大丈夫か?!」
「・・・あなた。どうやら赤ちゃんが出たがってるみた・・・!」
「すぐ連絡するまってろ。」
どうやら予定日より早く分娩が始まったようだ。俺は大急ぎで覇道財閥の直轄病院へ連絡した。

―4時間後。覇道財閥直轄病院の分娩室前。
巨大組織の覇道財閥の直轄病院だけあって産婦人科の分娩室の前には俺以外にも3人ほど男性がいた。
皆今か今かとそわそわしている。当然俺含む。

そのうちの一人の奥さんの分娩室の中から「おぎゃあ!おぎゃあ!」と産声がした。新しい命の誕生だ。
「Sさん産まれましたよ。男の子です。」
「は、はい。皆さん。お先に失礼します!」
「しっかり、お父さん!」
そういって一人の男性が分娩室へ入っていった。

そして時間が経つごとに一人、また一人と新しい命が誕生した。
それからさらに1時間が経つのに俺の妻のいる分娩室からは声がしない。
「うーむ・・・!!」
大丈夫!大丈夫と自分に言い聞かせるがやはり落ち着かない。
看護師さんに中の様子を聞こうかとした時だった。
「おぎゃあ!おぎゃあ!!おぎゃあ!!!」
「ひぃっ!!」
産声に情けない声で跳び上がる俺。心拍があがっているのがわかった。
看護師さんが出てきて告げた
「大十字さん。産まれましたよ。元気な女の子ですよ。」
「はい・・・!行きます・・・!」
そうして俺は分娩室へ入っていった。

そこには我が子を産んで満足気な表情の妻と生まれたばかりの娘がいた。
「よくがんばったな。ママ。」
「パパもずっと支えてくれたじゃない。」
「たいしたことぜんぜんやってないけどな」
「一緒にいてくれたのが一番の支えです♪」
微笑ましい夫婦の会話。
「ねえ。パパ。一緒に私達の子供にお礼を言いましょうよ。」
「そうだな。ママの言う通りだ。」
そうして生まれたばかりの娘に向かって言った。
「「生まれてきてくれてありがとう。これからずっとよろしくね。」」
「おぎゃあ!おぎゃあ!!!」
娘は元気に返事をしてくれた。

こうして大十字九郎と大十字エンネアと夫婦の二人三脚から新しい命の加わった三人四脚の歩みが始まった。

                     □ □ □ □ □ □ □ □ □ □                   

”エピローグ”

―大十字九郎邸宅
娘は順調に成長し言葉を話すほどにもなった。
「パパ〜」
「おう。ラムちゃんはお利口でちゅねー」
「パパったらすっかりラムちゃんの虜なんだから嫉妬しちゃうわ〜」
あれから俺達は娘に「大十字ラムネ」と言う名前をつけた。
偶然にもアーカム川のお祭りがあった日に生まれてきたからその思い出のラムネを名付けたいという妻の意向で、俺も納得し届け出た。
「心配するなよ・・・俺が人生のパートナーとして愛しているのはお前だけだから。」
「クスッ」
それはわかっているから妻は笑って応えた。

「ねえ、あなた。今は昔のエンネアに戻っていい?」
「ん・・・?いいぞ?」
今でも時々童心に帰るのか俺の妻は「エンネア」に戻る。
特別に拒むこともないので俺は受け入れる。
「九郎・・・。エンネア、今本当に幸せだよ・・。」
「俺もだよエンネア・・・。」
「パパ〜ママ〜」

かつての悲劇の宿命を課されていたエンネアという少女はようやくようやくようやく(以下無限に続くので略)仮初でない本当の幸せをと手にした。
これから様々な障害が待っているかもしれない。
それでも大十字九郎と大十字エンネアと大十字ラムネの大十字一家には確信があった。
自分達の心は決して折れることはない。かつて魔を断つ剣(デモンベイン)と言われた人のためのデウス・マキナのように…。

―Fin―


                     □ □ □ □ □ □ □ □ □ □                   


あとがき

初めましての方は初めまして。こんな奴を知っててくれてる方はまたお会いできて光栄です。
まず、今回この九郎×エンネア小説を書こうと思ったのは、スーパーロボット大戦UXでデモンベインが参戦したのにもかかわらず、エンネアには救いがなかったことです。

バンナムさんとしては原作通りにして様子見とのことでしょうが、ゲッター線で蘇った東方不敗師匠のように救済があると思っていただけにこれはかなりショックを受けました。
そして「エンネアを救い隊」というHPを立ち上げ、エンネアの救済を求める声を外部に発信しました。
そして9月9日の九エンの日の完成を目指してこの小説を書き続けました。

今回ゲストに参加した他作品のキャラはJ一家はスーパーロボット大戦でデモンベインと共に参戦した、HEROMANのジョーイ君一家です。
やはり彼は外せないと思い参加していただきました。
おばあちゃんにはエンネアの魂に呼びかけるためにああ言う形になりました。おばあちゃんが好きだった方ごめんなさい。

そしてもう一人ブラックロッヅのデストロイヤーノウスはモデルはジョジョの奇妙な冒険の重ちーです。
しゃべり方とかを参考にしただけで外見はかなり違うイメージだと思ってください。

最後は九郎とエンネアの娘の大十字ラムネはIS(インフィニット・ストラトス)の更識楯無がモデルです。
赤ん坊なのでわからなかったと思いますが彼女が大人になったエンネアのイメージに近かったので。
名前の「ラムネ」はエンネアの声優さんの成瀬未亜さんに決めていただきました。成瀬さんありがとうございます。

他のキャラは特にモデルはいません。オリキャラですね。

最後までこのヘボ小説読んでくださった方、二人の娘の名前を考えてくださったエンネアの中の人の成瀬さん、
エンネアに救われて欲しい方、デモンベインが好きな方、ニトロスタッフの皆様。
皆様に心から御礼を申し上げたいと思います。
そして公式やスパロボでエンネアが心からの笑顔で笑える時を信じて俺はこれからもエンネアの二次創作を続けたいと思います。

ご愛読ありがとうございました。





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