本当の幸せ (1)
 
アルルートの最終決戦後、アルは九郎を救われた世界に還し、旧神となり並行世界の旧神九郎と出会うという原作のTRUEENDとHAPPYENDが混じっている状態になっている2次創作SSです。
作成者の関係上九郎×エンネアの色が強いですのでそれらが許せない方はブラウザバックを。

”プロローグ”

―ここは地球。しかし大十字九郎とアル・アジフが救った世界とはまた違う並行世界の地球。
惡い神様を倒すべく善い神様は今日も戦い続けていた。

「強い・・!君たちは本当に強い・・!でも僕のしぶとさを甘くみないことだね。人の創りし神!」
今回は勝ち目がないと悟った混沌の邪神は姿を消した。
「何度でも、何度でも斃してやるさ!ナイアルラトホテップ!」
「九郎。熱くなるのはいいが、たまには休め。今回あれだけやったんだ。しばらく彼奴は来ない。」
人の創りし神、大十字九郎とそのパートナーのアル・アジフの日常的な会話。

「九郎。ところで彼奴の存在には気づいておるのだろう?」
「ああ・・この世界で唯一の俺たちのサポーターのことだろう。アル?」
「サポーターなら彼奴にお礼をしなくてはな。汝のいた世界ではそれが普通なのだろう?」
「そうだな・・エンネアには何度も助けられた・・。そして今も見守ってくれている・・。お礼をしなくちゃな。」
この世界での二人の唯一のサポーターの名は旧神九郎の言った「エンネア」。
二人が救った世界の救われる前の世界で何億回という絶望を繰り返した少女である。
その彼女も絶望から解き放たれ今はこの世界で邪神と闘い続ける二人を影から見守る存在である。
そして二人は影から見守ることを決めた彼女の意志を尊重し、直接会うことはしなかった。
しかし、二人は彼女にお礼をするために彼女のもとに鬼械神(デウスマキナ)を疾走らせた。

「よう・・エンネア。いつも応援ありがとうな・・・。」
「え〜?!九郎と古本娘なんで来たの〜?!もしかして九郎。やっぱりアルよりエンネアの方が良かったの〜?」
「相変わらず癇に障るな汝は・・・!」
エンネアは突然の二人の訪問にびっくりした様子ながら元の世界で一緒に暮らした時と同じようにアルをからかった。
そのからかいにアルは漫画の怒りのマークを出しているが九郎ははっきりという。
「それはない。俺のパートナーはアルだ。エンネア。悪いがお前じゃない。」
「だよねー。じゃあ何〜?見せつけにきたの〜?「リア充爆発しろ!」ってエンネアに言わせにきたの〜?」
「此奴・・。全然変わってないな・・・。」
前の世界から変わらないエンネアの高いテンションに飲まれそうになる二人。
「エンネア。落ち着いてくれ。今日はエンネアにお礼がしたい。」
「何々〜一日九郎を好きにしていいとか〜?」

アルは九郎の先ほどのセリフを聞いて落ち着いてエンネアに告げる
「お礼というかどちらかと言えばお願いだがな。汝に救われた世界にいる九郎のことを頼みたい。」
「そう。その世界の俺はアルもお前も失って寂しがっている。だから、エンネア。お前の笑顔で俺を救ってくれ。」
「え・・・そんな・・。エンネアはこの世界で二人を見守っているだけで充分なのに・・」
突然の提案に戸惑うエンネア。
「それで本当にいいのか?エンネア?お前は今までずっと数えきれないほど辛い思いしてきたはずだ。そろそろ自分の幸せも考えてもいいはずだ。」
「それに、この世界では汝は妾から九郎を奪うのは不可能。だが、あの世界の九郎なら受け入れてくれるかもしれないぞ?それとも受け入れられる自信がないのか?汝は?」
そのエンネアにアルは勝ち誇った口調で言うと、九郎はやさしく頭を撫でながらこういった。
「エンネア。俺はこれしかできない。でもあの世界の俺ならきっともっともっとお前を受け入れてくれるはずだ。だから・・・。」
九郎の手は温かい、これは体温ではなく心の暖かさだ。
エンネアはしばらくの沈黙の後涙声混じりに応えた
「・・・本当は・・・本当は・・・!エンネアもアルみたいに九郎にいっぱい愛されたい・・!愛したい・・!」
それは「この暖かさをもっと味わいたい。」と思った彼女の心の底からの叫びであった。
「エンネア。旧神である俺達の力とお前の魔導書の力を合わせればお前をあの世界に送還できる。」
「汝は魔導書を失うことになるがそれでもかまわないか?」
二人の旧神の問に対してエンネアは明るい笑顔で応えた。
「九郎に愛してもらえるならそんなのいらないにゃ。それよりアルはあっちの世界の九郎がエンネアに寝取られていくのを耐えられるかにゃ〜?」
「それをできるかは汝次第だ。それよりも九郎と妾の絆の深さを知って絶望するなよ〜?」
「ははは・・・。」
相変わらずコロコロ変わるエンネアの表情と火花を散らす女の闘いに別世界とはいえ同一人物である手前九郎は苦笑いした。

そしてアルとエンネアの口喧嘩が一段落すると3人は救われた世界にエンネアを送還する準備に入った。
五芒星が九郎とアルの手によって出され。エンネアはその中央に立ち魔導書「無銘祭祀書」を出した。
五芒星が光り、魔導書「無銘祭祀書」が光塵となっていく。そしてエンネアの体も光になっていく。
「じゃあな・・!エンネア!向こうの俺をよろしく頼むぜ!そしてお前も幸せになってくれ・・!」
「ありがとう九郎。向こうの九郎を幸せにしてエンネアもいっぱいいっぱい幸せになるよ!」
こちらの世界の九郎に精一杯の笑顔で応えるエンネア
「ふん。まあ、せいぜい頑張ることだ。妾も汝には救われたしな。」
「アルが嫉妬するぐらいイチャイチャしてやるにゃー。じゃあねー!」
そうしてエンネアは絶望から解放され、九郎が元いた世界に旅立って行った。

「さて・・アルそろそろナイアルラトホテップが戻ってくるころだぜ。」
「ああ・・いつでも妾も準備はできている。」
エンネアを見送った二人は再び戦場に戻る。
今日も二人の善い神様は惡い神様と闘い続ける。エンネアと向こうの世界の九郎の幸せを願いながら。

                     □ □ □ □ □ □ □ □ □ □                   

”家族は急に帰ってくる”

―人間世界の地球
「ふぅ・・・今日も疲れたなあ・・。今日は早めに寝るとするか・・・。」
ため息をついて帰宅の路を歩く青年こそ、ミスカトニック大学極秘の隠秘学科の学生にして依頼のさっぱり来ない三流探偵家でもあり実はこの世界を絶望の螺旋から救った救世主の片割れ。
現実世界ではマスター・オブ・ネクロロリコンとかシャイニング・ロリペドヘドロンとか完全にロリコン扱いされているが本名:大十字九郎だ。
でもなんだ、実際ナイアさん・・・もとい邪神:ナイアルラトホテップに俺はロリコンと公言したし別に悪くは思わない。ファンの間では蔑称でもないし。
そんな救世主様も救われる前の世界の記憶のない救われた世界では魔術理論を学んでおり、ちょっと特殊ではあるがそれ以外はただの一人の極ありふれた青年だ。
―ポッ・・ポッ・・ポツ・・ザー
「やばいなあ・・雨が降ってきやがった。」
日が沈んでからの雨は正直あまり好きではない、地球の生命体には欠かせない水は命の源。もちろんそれはわかっている。
しかし、俺が夜の雨が好きになれないのには訳がある。
別れた救世主の片割れアルと共に一人になった俺の心にぽっかり穴を空けた存在、エンネアと出会いを思い出すからだ。
決して嫌な思い出ではない、むしろ、アルとエンネアと3人で暮らした疾風迅雷のように過ぎ去った一週間あまりではあったものの、「あまりに騒がしい生活」の記憶。
今の俺に取ってその存在が必死に慣れようとしている「この静か過ぎる生活」が恐ろしく虚しく感じるからだ。
そしてそれ以上にエンネアとのあまりにも哀しすぎる別れ。それを思い出すと胸が張り裂けそうになる。
その張り裂けそうになるほどの哀しい記憶があっても俺にはアルと言うパートーナーがいた。
だから俺は最後まで闘い抜くことができた。が、そのアルも「ずっと一緒にいる」と約束したのに、結局最後まで「太陽の下で生きて欲しい」と言うてめえ勝手な理由で俺と別れて今どうしてるかまったくわからない。
せめて、アルだけはきっとどこかで幸せにしていると自分に言い聞かせるものの日に日に心の隙間風は強くなるばかり。
「これはきつくなりそうだな・・ライカさんとこ寄ったほうが良さそうだな。」
俺はライカさんの教会に急いだ。
「うへーこりゃひどい。」
下着までずぶ濡れになった。
美(少)女の濡れた姿なら需要もあるだろうがショタコンにも完全守備範囲外の俺の下着まで濡れた姿とか誰得である。
某やらないかとか絶対ごめんだからな。
俺は上着だけでも教会の前で水気を絞る。
「―う」
う?
「―ろう」
ん?ガキンチョ達が俺の噂でもしているのか?
「どいてー!九郎ー!!」
てどこから呼んでだあいつら?
「はう・・・!」
グキッ次の瞬間俺は「何か」に上から押しつぶされた。
首が変な方向に曲がっている・・・ああー人生のスタッフロールはここだったのか〜。天国のお母さんお父さん、九郎逝きます〜!
「勝手に死ぬな〜!ていっ」
漢字こそ違うがヤムチャ声の某MSパイロットのように逝く宣言した俺を現世に留めたのは曲がった首を元の方向に戻した(?)一人のどこかで聞き覚えのある少女の声だった・・・。
「うう・・・誰だ・・・俺の人生のスッタフロールを開始させておいて強引に停めたのは・・・」
顔を上げると聞き覚えのある声の主がはっきりとわかった。
「九郎を味わうのはエンネアなんだから!死ぬな―!」
―?!
「・・・・」
口がぽっかり開いたままその声の主を見つめる。
「九郎?」
「・・・・・・・」
見覚えのある少女だった・・・。
「へ・・!あの時俺を本気で殺そうとした癖に今度は勝手に死ぬな〜かよ!」
闇のように深淵で奥の深い惹きこまれるような瞳と俺の買った服を着ている猫のような美少女。知らないはずがない。
「あれは誤解だってば〜九郎のいじわる〜」
ギィ・・・何か開いた気がするが俺は気にしてられない。少女に溢れんばかりの想いをぶつける
「・・・・エンネア!あの時言った通り背筋の凍るようなお仕置きしちゃる!!」
「きゃあ〜!」
ふざけたやり取りのつもりで俺はエンネアに襲いかかろうとした(当然性的な意味は含まない)時だった。
「く、九、九郎ちゃんが、が、つ、ついにほ、本性をー!!!!」
上着を脱いでいる俺、そしてその俺に襲われそうになっている少女、そして「お仕置き」という言葉。役満だった・・。
バァン!勢い良く教会の扉がライカさんによって「閉められた」というか「塞がれた」といった方が良さそうだ。
「ラ、ライカさん誤解だー!開けてくれー!まじ気持ち悪ぐらい濡れているんだー!」
「ぬ、濡れているー!?やっぱり九郎ちゃん!あなたは正真正銘の性犯罪者なのよー!この子たちまで餌食にしようとするなんてー!ああー神様!この九郎(サタン)の手からこの子達をお守りくださいー!!!(以下永遠と俺を鬼畜ジュドーことティベリウスのような存在だと言い続ける)」
長いのに加えて内容が内容だけに以下略―
原作デモンベインやったことある方なら大体予想付くでしょうし。
その後ライカさんに何を言っても無駄だった。ライカさんはエンネアには「逃げてー!」と、俺には「警察に自首しろー!」と言い放ち取り付く島もないというレベルじゃなかった。
「九郎・・・その・・ごめんね・・・?」
エンネアは苦笑いしている。
「いいんだよ・・・エンネア・・・ほら、人生は結局±0と言うじゃないか。それにライカさんの誤解は後々解けばいいし・・・。」
九郎と書いてサタン(悪魔)とまで言われた俺はこの壮大で壮絶なる誤解をどう解くかで頭を抱えている。
「エンネアが帰ってきて±0はひどいー!ぶー!ぶー!」
ブーイングを鳴らすエンネア。
「――・・・。」
俺は実の所混乱していた。ライカさんの誤解もあるが何故突然エンネアが帰ってきたのかがわからない。
さっきはうれしさの勢いでああ言ってしまったものの、現状把握が難しいので必死に頭を整理するがやはりわからない。
「エンネアを連れて帰ってくれるんでしょ?クトゥルーなんか比較対象にすらできないほど素敵な九郎の事務所に?」
それを察したのかエンネアは絶望の螺旋で俺がエンネアと別れる直前に約束したことを言った。
その言葉は俺の頭は急速に混乱を治めてくれた。
「ああ・・・そうだったな約束通り帰ろう・・。エンネア・・。」
もう・・俺は考えるのを辞めた。エンネアが帰ってきた・・。エンネアとの絶望の螺旋では果たせなかった約束は守らないと・・。この2つで十分だ。他のことなんてどうでもいい・・・。
「うん!!」
元気よく返事をするとエンネアは俺の腕にしがみついて来た。
俺はエンネアの温もりを感じながら大十字九郎探偵事務所に帰路を歩いた。
俺の心の隙間風は何処へやら、そして陰鬱な雨もすっかりあがり空は星々に彩られていた。

                     □ □ □ □ □ □ □ □ □ □                   

”家と天国と地獄のお風呂”

―大十字九郎探偵事務所
「ふーただいまー!」
一人になってから言わなくなった自宅での「ただいまー」の言葉、だが今日は俺ははっきりと口に出す。
理由は言うまでもなく・・・
「ただいまにゃー!!!あーエンネアが来る前のちらかった状態に戻ってるー!」
「――!エンネア・・もう少し小さい声で言ってくれよ・・・。あと部屋については一人だったからイマイチ片付ける気がしなかっただけでそのなんだ・・・」
とてつもなく大きな声でただいまの宣言をするエンネアが帰ってきたからだ。部屋については事実なので言葉を濁すしかない。
「九郎ー!それよりも「ただいま」って帰った人に言うことあるでしょ〜♪」
欲しがるような意地悪なような口調で言うエンネアに俺は当然こう返した。
「おかえり・・・!エンネア・・・!」
当俺は雨でずぶ濡れだったが、嬉しさの余りそのことを忘れていたのでエンネアの頭を撫でる。
「九郎〜嬉しいけどそのままじゃちょっと体に毒だよ〜」
「ああ・・へっクッショ!」
「ああーやっぱり・・!九郎・・喜んでくれてるのは嬉しいけど、早くお風呂入ったほうがいいよ〜」
「すまん・・エンネア。そうする。」
やはり雨に打たれたまま着替えなかったのはまずかった・・・俺はエンネアの言う通り風呂に向かうことにした。

―お風呂場
―カコーン―
「はあー生き返るなあ〜」
いつもはシャワーだけだが、今日は気分がいいのでシャワーを浴びながら風呂に入るという贅沢な方法で入る。
そこ!なんてささやかな贅沢とか言うな〜
「ふあー・・・んー?」
ってガサゴソと脱衣所でうごく影がある・・・ま、まさか・・・?!
「はい!九郎!お背中流しますよー!」
「―!」
や っ ぱ り か !案の定エンネアがお風呂に入ってきた。慌てて眼を覆いエンネアを見ないようにする。
「九郎ー!大丈夫だよー!」
「――!!?!」
といいつつ抱きついてくるエンネア!い、いかんこれじゃ状況的に本当にライカさんの言った通りの存在なっちまう?!
―?当たっているのは素肌ではなかった。
恐る恐る眼を開けると「エンネア」と名前の書かれたスク水を着ている。あ、アニメ版ですか・・。
「本当は裸がいいんだけど・・・エンネアは空気の読める娘だからねー!」
「エンネア・・お前が空気を読めるかどうかはかなり疑問だが・・少なくとも大人の事情ってのを知ってるんだな・・」
「ま、まあね。にゃははは!」
苦笑いする俺とエンネア。健全小説なのでご容赦願いたい。
「ねえー九郎〜だいぶ体凝ってるね」
「あ、ああ・・・一人だったしマッサージ屋なんて贅沢な所に行く余裕もなかったしなあ・・。」
背中を流してもらっている時エンネアが俺の体が硬いことに気付いた。
余裕が無いというのはもちろん金銭的にも精神的にも時間的にもだ。
「じゃあエンネアがマッサージしてあげる〜九郎〜うつ伏せなってー」
「ん・・じゃあお願いしますか。でもその前に腰にタオル巻かせてくれ。」
「えー!別にいいのに〜」
「いや、さすがにそれはダメだろ・・・。」
体は凝ってるしマッサージはありがたいが、とりあえずそれは譲れない。
「お客様〜気持ちいいですか〜♪」
「う・・ううむ・・・なんというか・・・グレイト・・!」
エンネアはうつ伏せになった俺に馬乗りながら背中や腰、太ももやふくらはぎを的確な強さかつ丁寧にマッサージしてくれる。
アルにも何度か特訓の後マッサージを頼んだことはあるが力加減はむちゃくちゃだったし、凝っている場所を言ってもなかなかそこに辿りつけないし逆に疲れてしまった。
エンネアはすごい。家事全般もそうだったがこういうのもプロ顔負けだ。
「痒い所はございませんか〜♪」
「んーじゃあー脇のあたりをー」
「〜♪☆」
ん?なんかどこかで何かが光ったような・・・
「にゃー九郎〜♪」
「―?!」
俺は甘かったエンネアがただのマッサージで済むはずもなく
エンネアは覆いかぶさるように俺に体を擦りつけてきた(もちろん先述のとおりスクール水着だが)
「気持ちいいですか〜♪」
「エ、エンネア!や、やめ・・・!」
「ほらほらほら〜〜♪♪」
必死に抵抗を試みるがエンネアの猛攻は止まらない。
実のところエンネアの重さは調度良いストレスになってるし、女の子のやわらかい肌・・そして膨らみかけとはいえ当たる胸・・・
ってダメだ!ダメだ!何考えてるんだ俺はこれじゃあライカさんの言う通りになっちまう
あーでも気持ちいい・・
ダメだダメだ・・
気持ち
ダメ
きも

……
「―――!」
「わー九郎ー!」
ボン・・!理性と本能で揺れ動く俺の脳内ブレーカーが落ちた。
俺は顔面を漫画の古典的表現で顔を爆発させ意識を失った・・・。

                     □ □ □ □ □ □ □ □ □ □                   


”自分勝手な善い神様”

―――夢
見渡す限り薄い虹色の空間。そしてそこに浮いている(?)俺。
あのーここはどこですかーもしかして俺は死んだんですか神様ー。
「相変わらずよのお。お人好しの我が主・・。」
「―!」
散々聞いた声。振り返ると惹きこまれるような翡翠色の目をした少女がいた・・・。
髪を後ろでくくり服装も変わっているが間違いなく俺のよく知っている存在。
「アル――!・・・え?」
俺は再び出会えた相棒に抱きつこうとする。が、アルの体を素通りしてしまう。
「うつけ。ここは夢だ、実体はない・・。」
「アル・・・。」
俺は戸惑った。アルに触れられないもどかしさはもちろんだが、アルが冷静過ぎる。
久しぶりに会えたというのに。もっと情熱的な言葉を期待していたのだが。
「どうやら、あの小娘が帰ってきたのが余程うれしいようだな。妾は汝がもっと強い男だと思っていたぞ?」
「誰のせいだと思ってるんだよ・・。ずっと一緒にいると言ったのにもう俺は3ヶ月以上一人だったんだぜ?そんな時エンネアが帰ってきたのを歓迎しちゃ悪いかよ?ていうかお前は一体何処にいるんだよ?」
アルは暫く黙ったままだったがはっきりとこっちを見てこう告げた。
「九郎・・・お願いがある。聞いてくれまいか?」
「その前に質問答えやがれ古本娘!テメーは今一体どこで何してるやがるんだ!」
俺からの半ば怒鳴り近い声で同じ質問を投げかける。
「妾か・・・。妾は今、別の世界で邪神達と闘っている。汝と共に。」
「・・・・俺・・・?」
まるで意味がわからない。どういうことだ?
「すまない。九郎。あまり時間がない、詳しいことは妾達が送還した小娘に聞いてくれ。だが妾のことは心配は無用だ。妾は幸せだ。」
「ちゃんと人の質問に答えやがれ・・・!」
アルはしばし沈黙してこう言った。
「あの小娘はずっとずっと辛い思いをしてきた。だから・・・九郎、あの小娘を幸せにしてやってくれまいか?妾達もできることは限られるが助けることはできる・・・。そして汝も幸せになってくれ・・それが妾の願いだ・・・!」
「聞く耳を持たない気かよ・・・!あーわかったよ!お前がその気なら俺にも考えがあるぞ!・・?!」
アルの後ろから眩いばかりの光がさしてくる。そこには男がいた。身長は俺と同じぐらい顔もよく似ていた。そしてオッドアイだった・・・。
「すまない。妾は闘いに戻らねばならない。九郎、妾は汝と過ごした時を決して忘れない。だから汝も妾と共に過ごした時を忘れないで欲しい。妾達はずっと汝らのことを見守っている。そして過去ではなく未来の為に生きてくれ・・・!」
そう言ってアルは俺によく似た男と共に光になって消えた。
「アル――――!!」
手を伸ばすが届かなかった。
――――――
―――


                     □ □ □ □ □ □ □ □ □ □                   

”新しいパートナー”

―大十字九郎探偵事務所のソファーの上
「九郎大丈夫?ごめんね。ちょっと調子に乗りすぎたみたい。」
「エンネア・・・?」
目を開けるとエンネアが俺を膝枕し心配そうに上から俺を覗き込んでいる。
さっきのは夢だったのか・・・。夢にしてはずいぶんと記憶に鮮明に残っている夢。
「九郎・・・さっきアルに会ってたの?」
「・・・ん・・まあーそんなところだ・・・なんでわかるんだエンネア・・・?」
「当たり前だよー。「アル―!!」て寝言で思いっきり叫んでいたよ。九郎。」
ああ・・・なるほどそういうことか。
暫く沈黙が続いた。それを破ったのは俺だった
「エンネア・・いくつか聞いていいか・・?答えにくいことは答えなくていいから・・・。」
「何・・?九郎?」
「・・・夢でアルはお前をこの世界に送還したと言っていた。つまりお前はアルと同じ別の世界にいたってことか・・?」
「・・・そうだよ。アル達は別の世界で邪神達と闘ってた。エンネアはアル達その応援をしてたってところかな・・?」
「・・・なるほどそれでアルがお前をこの世界に送還されて、教会の上から降ってきたってところか。」
「まーそんな感じ。」
ここは合点がいった。俺は続けてエンネアに問う。
「「アル達」ってことはアル以外にも邪神と闘っている奴がいるってことか・・・?」
「そうだよ。」
「その人物らしいのが夢の最後で出てきたんだがあれは誰なんだ・・?俺によく似ていたが・・?」
「・・・・九郎だよ。別の世界からやって来た神様になった九郎。」
「・・・・。」
なるほど・・アルが言っていたのはそういうことか。
「アルのいる世界にはなんとかこっちからはいけないのか・・・?」
「んー無理だと思うよ・・・。エンネアがこっちに来れたのは二人が神様だったのとエンネアの魔導書の力を使い切ることでなんとかなったぐらいだし・・・エンネアにはもう魔導書がないし。」
「・・・・。」
魔術師に取って魔導書は欠かせない存在だ。デウス・エクス・マキナ召喚ができなくなるのはもちろん、自身の魔力も著しく低下する。
それがないと異世界に行くのなんて夢のまた夢なのは俺もよくわかっていた。
「・・・アルは別の世界の俺と一緒に闘っていて幸せそうだったか・・・?」
「うん。とっても・・・。」
なんか納得できないところがあるが夢でアル自身も自分のことは幸せと言っていたしそうなんだろう。と自分の言い聞かせた。
「ねー九郎。エンネアからも聞いていいー?」
「・・・ん。なんだエンネア・・?」
エンネアが今度は逆に聞き返えしてきた。
「エンネアもあの世界に一応いたんだけどアルのことばっかり聞くね。やっぱりこの世界に戻ってくるのはエンネアじゃなくてアルの方がよかった・・?」
グサッ・・!なんとも耳の痛いところを聞いてくる。
「あ、いや・・・別にそういうことじゃ・・。」
言葉を濁ししまう俺。純粋に俺を慕ってくれてるエンネアは好きだ。
だが共に命を掛けて闘ったアルの存在はあまりに大きい。だから否定すると嘘になる。
それを察したのかエンネアはどこか寂しそうな笑みで言った。
「・・・いいんだよ九郎。エンネアは二番目でもいいから愛してくれれば。」
「それに・・・あっちの世界のアルと違ってエンネアはこの世界の九郎のそばにずっといられる。まだまだ逆転のチャンスはあるってことだし。」
「九郎はエンネアのこと女として愛してくれる・・・?」
「・・・」
あまりに重いエンネアの言葉。受け止め、応えられるのはただ一人俺だけ。
「エンネア・・・返答をする前にお前に確かめなきゃいけないことがある。」
「何・・・九郎・・・?」
返答する前にこれだけは聞かねばなるまい。
「俺はその時の記憶がないが、絶望から解放される前の世界でお前数えきれないほど別れた・・・そして解放された世界でもアルの勝手な理由で一人になった・・。」
「だから・・・もう・・・二度とどこにも行かないと・・・誓ってくれ・・!」
別世界で神になり邪神と闘い続けている大十字九郎とは同一人物とは思えないほど二人との別れの連続は俺を弱くしていた。
それを悟ったのかエンネアはしばらくの沈黙の後こう言った。
「ねえ・・・覚えてる・・?あの世界で今のような状況で「なんで戦うの?戦っても未来を変えられない、何も変わらない。それでもまだ戦える?」エンネアが九郎に聞いたこと・・。」
「ああ・・・よく覚えてるよ・・。あれはエンネアがあの世界で数えきれないほど絶望を繰り返したからだったんだよな・・・」
俺はその絶望の螺旋の中の前の世界の俺の記憶はない。だが、エンネアは全ての記憶があるそれはあまりにも残酷な記憶の連続はずだ・・・。
「その時の世界の九郎と別れるのはとってもとっても辛かったし九郎にもとってもとっても辛い思いをさせちゃったね・・・ゴメンね・・。」
「謝るのはこっちの方だよエンネア・・・。億という回数が繰り返されるのに今の俺までお前を救えなかった・・まあ・・今の俺でも救ったのはお前との別れの後だし・・正直救えたと思っていない・・・本当に悪かったな。」
俺はアルと世界を救ったとはいえそれまでに犠牲になった人はエンネアも含めて計り知れない。謝るのはむしろこちらの方だ。だがエンネアはそれを否定した。
「そんなことないよ・・。エンネアがエンネアでいられたのはずっとずっっとその時の九郎がエンネアを励ましてくれたから・・・九郎がずっとずっと九郎でいてくれたから。だから・・・」
「――」
「――ん!」
エンネアがやさしく唇を重ねてきた。でもそれはあの時の哀しい別れのキスではない。
「だから・・・今度はエンネアが九郎をずっと支えてあげる番・・・だからもうどこにもいかない・・!九郎に寂しい思いなんかさせないよ・・・!」
それはとても力強い返事だった。それを聞いた俺はソファーから起き上がり強くエンネアを抱きしめた。
「エンネア・・・!俺もずっとお前と一緒だ・・・!」
「九郎・・・!」
そして二人は再び唇を重ねる。
それは世界を救った救世主であった凡人大十字九郎とその新しいパートナーである世界最強の魔術師であった少女エンネアとの歩みの始まりの証であった。



続きを読む


戻る